高精細映像伝送を支える最新技術
近年、車載カメラの搭載数が増え、各カメラの高精細化も進んでいます。各カメラの映像データを低遅延でECUに伝送するためにSerDesが用いられるケースが増えてきています。
本コラムでは、高精細映像伝送を支える最新技術であるSerializer/Deserializer(シリアライザー・デシリアライザー)について解説します。
Serializer ⁄ Deserializer(シリアライザー・デシリアライザー)とは
シリアライザー・デシリアライザーとは、ビデオI ⁄
Fを同軸または差動信号に、同軸または差動信号を、ビデオI ⁄
Fに変換する変換するICです。
同軸または差動1対で大きな映像を伝送でき、著作権保護機能も搭載しているものもあるため、マルチメディア・車載インフォテイメント、ADAS領域などで幅広く使用されています。
ビデオインターフェイス
- MIPI D-PHY
- LVDS
- CMOS RGB
- eDP(Emmbedded Display port)
- HDMI
- DVI
Serializer ⁄ Deserializer(シリアライザー・デシリアライザー)の役割
ビデオインターフェイスに使われる規格の多くは、複数本のデータ線で短距離の映像伝送を実現しています。SerDesを使用することでデータ線を差動一対(または同軸)にまとめ、長距離伝送を可能とします。
ケーブルコネクター
SerDesで使用されるコネクターには大きくわけて2種類存在します。
- STPケーブル
差動一対で伝送するためEMC性能に優れ、ECU間同士の接続に使用されるケースが多い。
- Coax(同軸)ケーブル
コスト・ケーブル重量の面で優れ、ケーブル配策面で優位なため、カメラ-ECU間の接続に使用されるケースが多い。
アプリケーション例
SerDesは、幅広い領域で使用されますが、近年では車載ネットワークにおいて採用される事例が増加しています。
自動運転やADAS、IVI領域において、高速かつ低遅延で映像伝送するためにSerDesは欠かせない存在で、1台の自動車の中で使用されるSerDesの数も増えつつあります。
上記のイラストは、ADAS ECU ⁄
コックピットECUにおけるSerDes使用例です。
本例では、車載カメラや車内ディスプレイが複数のSerDesで接続された構成を示しています。
技術解説
イコライザー(Equalizer)
送信端の波形に比べて受信端の波形は減衰してしまいます。
理由はケーブル・コネクターを通ることで、信号が損失や反射、吸収されることに起因します。
これらの減衰した信号を復元する技術がイコライザーです。
イコライザー技術は減衰した信号の補正や平均化、特定の周波数帯域の復元や歪みを補正技する術であり、減衰した信号を元通りに(または限りなく復元)することができます。
高速信号/低速信号
SerDesは、映像データを伝送するための高速信号とI2Cなどのシリアル通信などを伝送するための低速信号が重畳された状態で通信を行います。周波数の異なる信号を多重させてエンコード等をかけることで1本のシリアルケーブル上で双方向通信を実現させています。カメラ-ECU間などの接続においては、カメラ(Ser)側から映像データをECUに送信しつつ、ECU(Des)側からI2Cコマンドや露光制御用のGPIO信号などをカメラに送信することがあります。
PoC(Power over Coax)
同軸ケーブル上に高速信号と電源を重畳させるPoC(Power over
Coax)という伝送方法が普及してきています。
従来のように電源用のケーブルコネクターを別途設ける必要が無く、車両軽量化や配線引き回しの簡素化に貢献している伝送方式です。
1台の自動車に複数のカメラが接続されるようになってきたことで、専用の電源用ケーブルコネクターを用意する必要のないPoCへの注目が集まってきています。
PoCでは1本の同軸ケーブル上に高周波信号と直流電流が重畳されており、
高周波信号が電源回路に漏れ出たり、逆に直流電流がSerDes
ICに流入するのを防ぐためにBias-T回路が必要となります。
Bias-T回路はDC成分をブロックするためのコンデンサー、高周波信号をブロックするためのフィルター回路で構成されています。
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