- Vol.1
2024年最新 スマートホーム徹底解説 ~入門から最新トレンドのMatterまで~
この記事は8分で読めます。
前半部分はスマートホームのメリット、構築方法を説明します。後半部分は実用例、最新規格Matterについてご紹介します。
日常生活の変化
新型コロナウイルスの感染状況が収束に向かい、出社する機会が増えてきています。在宅勤務やテレワークを前提とした生活のリズムが変わり戸惑いを感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
ワークライフバランス
仕事、家事、子育て、通勤時間など、忙しい日常に追われる中で自分の時間を確保することが難しくなっています。新型コロナ禍以前の「当たり前」が変わり、家族と共に過ごす時間の大切さを気付いたのではないでしょうか?

セキュリティ
共働き家族や離れて暮らす家族にとって、住宅セキュリティや子供、ペットの見守り問題も重要です。スマート家電を活用して家事の負担を減らし、家族の安全を守る方法を考える必要があります。

スマート家電
これまでのスマート家電は住宅設備とかかわっており、導入には工事費用や時間が必要でした。
また、自分が使っているスマートフォンに対応するスマート家電の選択肢が少なく、必要なスマート家電がない、ということもあります。アメリカ大手のIT企業のスマートホームネットワーク向けで、日本で展開されているスマート家電は10製品にも満たしていない現状があります。
独自路線のスマートホーム機器では、情報漏洩などのセキュリティ面で不安を覚える方もいらっしゃるかもしれません。
この特集では、新しい生活様式に合わせたスマート家電の活用術やセキュリティ対策、簡単な設定方法などを紹介し、快適で安全な生活をするためのヒントを提供します。
家事や見守りの負担を減らし、新しい生活様式に合わせたスマートな暮らしを実現しましょう。

スマートホームネットワークで解決
ワークライフバランスの向上
日常生活の不便を解消し、時間を節約するために、スマート家電の利用が推奨されます。照明やエアコンの操作をスマートフォンで行うことで、手間を省き便利に生活を変えることが可能です。

ワークライフバランス
仕事、家事、子育て、通勤時間など、忙しい日常に追われる中で自分の時間を確保することが難しくなっています。新型コロナ禍以前の「当たり前」が変わり、家族と共に過ごす時間の大切さを気付いたのではないでしょうか?
電気・照明の操作
夏の暑い日や冬の寒い日、帰宅前にスマートフォンでエアコンを稼働させておけば、適温になるまでのストレスを解消できます。
食洗器・洗濯機・乾燥機の操作
スマートフォンから簡単に設定や操作ができれば、何度もボタンを押す必要がなくなり、家電のある場所まで移動して操作しなければならないという手間も省けます。これによって、時間を節約することができます。
スマート家電の連携
スマートホームネットワークを使用することで、スマート家電同士を連携させ、家事を自動化することができます。これにより、日常生活において非常に大きな変化を期待することができます。
遠隔見守り
自宅の様子や施錠の確認、子供の様子を遠隔で確認することが可能です。また、離れて暮らす両親や家族の見守りにも役立ちます。例えば、真夏の暑い日にエアコンを遠隔操作で起動させることで、熱中症の予防に役立てることができます。
スマートホームを構築
スマートホームについて詳しい方もいれば、まだあまり経験がない方もいるでしょう。そこで、この特集では初心者から中級者・上級者までを対象に、スマートホームの構築例を紹介します。それぞれのニーズに応じた情報を提供し、スマートホームの構築に役立つガイドをお届けします。

前提条件
スマートホームを構築するためには、以下の環境や機材を事前に用意する必要があります。
- 無線LAN環境
- スマートフォン
初級者プラン(スマートプラグ)
《使用デバイス》
- スマートプラグ
《設定マニュアル(以下のステップが含まれる)》
- ユーザ登録
- スマートプラグを検出(Bluetooth※)
- 無線LAN設定
- 設定(デバイス名、使用場所、自動更新タイミング等)
《主な利用場面》
- 遠隔操作
- 外出先で電気の消し忘れを対応
- 帰宅途中で前もって、玄関や室内の照明をつける
- タイマー
- 一定時間(◯分/◯時間)後にON・OFF制御
- スケジュール
- 曜日、時刻 に合わせてON・OFF制御
- 電力消費確認
- 使用状況を確認
- 家電の消費電力を比較
《おすすめ活用例》
- まとめて充電
- 電力料金が安い深夜の時間帯に毎日の電子デバイス充電をスケジューリング
- リモートでPCを起動
- 遠隔で会社のデスクトップPCを起動し、リモートで接続する
- Bluetooth® ワードマークおよびロゴは登録商標であり、Bluetooth SIG, Inc. が所有権を有します。
中上級者プラン(スマートスピーカー + 各種センサー・デバイス)

《使用デバイス》
- スマートスピーカー
- 温湿度計
- ロボット掃除機
- カーテン開閉装置
《主な利用場面》
- ユーザ登録
- スマートプラグを検出(Bluetooth※)
- 無線LAN設定
- 設定(デバイス名、使用場所、自動更新タイミング等)
《主な利用場面》
- 一定条件でロボット掃除機を動作させる
- 留守状態が30分以上続く場合
- カーテンの自動開閉
- 平日起きるアラームの5分前にカーテンを開ける
- 毎日寝る時間にカーテンを閉める
- 温度・湿度自動調節
- いつでも快適環境を手間なしで維持する
- 複数のデバイスをシーン別で連動
- ヨガをする場合、スマートスピーカーへの音声入力で、カーテン、照明、加湿器/扇風機、音楽などが連動する
《おすすめ活用例》
- 快適環境を自動調節
- 温度、湿度、明るさを一定水準に維持
- 日常のルーティン時短
- 日常生活パターンに合わせて、カーテン、照明、ロボット掃除機のトリガーを自動化
スマートホームの経済効果
この章では「スマートホームを構築」の活用例を実際に運用する場合の経済効果を試算してみます。
お金(まとめて充電例)
《ランニングコスト》
デバイス | 使用電力量(Wh) | 通販サイト参考値段(円) |
---|---|---|
スマートプラグ | ほぼ0(0.01以下) | 1,518 |
合計 | ほぼ0 | 1,518 |
《電気代の料金差(2024年5月1日時点、東京電力の契約プラン)》
- 夜トク8(エイト)
基本料金(1kW) | 電力量料金(1kWh) | |
---|---|---|
255.69円 | 午前7時~午後11時 | 42.60円 |
午後11時~翌午前7時 | 31.64円 |
- 夜トク12(ジュウニ)
基本料金(1kW) | 電力量料金(1kWh) | |
---|---|---|
255.69円 | 午前7時~午後11時 | 44.16円 |
午後11時~翌午前7時 | 33.33円 |
ピークとオフピークの料金差は約11円 ⁄ 1kWhのため、この料金差を有効活用するには、緊急性の低い電気利用を後回しにするだけです。
《設定方法》
スマートプラグ制御用アプリでスマートプラグのON時間を午後11時、OFF時間を午前1時(2時間以内充電完了の見込み)のスケジュールを設定します。
《省エネ試算》
- 電気代計算式
※バッテリー電力量(Wh) = バッテリー容量(mAh)× 充電時電圧(V)÷ 1,000
※電気代(円 ⁄ h) = バッテリー電力量(Wh)÷ 1,000 × 電気料金単価(円 ⁄ kWh)
項目 | バッテリー容量 (mAh) | 充電時電圧 (V) | バッテリー電力量 (Wh) | 台数 | 電力量合計 (Wh) |
---|---|---|---|---|---|
スマートフォン | 3,349 | 5 | 16.75 | 3 | 50.3 |
タブレット | 7,600 | 5 | 38 | 1 | 38 |
掃除機 | 3,000 | 26.1 | 78.3 | 1 | 78.3 |
ワイヤレスヘッドホン | 1,600 | 3.8 | 6.08 | 1 | 6.08 |
合計 | 15,549 | - | - | - | 172.7 |
- 節約電気代
一年間の電気代差分(円) = 電力量(Wh)÷ 1,000 × (ピーク料金 - オフピーク料金) × 2(時間) × 365
= 172.7 ÷ 1,000 × (42.6-31.64) × 2 × 365
= 1382円
ROI(費用対効果) = 1382(利益) ÷ 1518(投資額) × 100% = 91%
《まとめ》
1年間でわずか1382円しかお得にならないように思われるかもしれませんが、大型家電利用の場合や、機器の台数次第で数千円~数万円以上の差分が出る可能性があります。昨今の電気代値上げの影響もあり、少しでも利用料金を抑えたいですよね。一度設置したら、効果は数年以上渡り、スマートホーム初心者でも安心してお勧めの利用方です。
時間(日常ルーティンの時短例)
《ランニングコスト》
デバイス | 通販サイト参考値段(円) | 使用電力量(Wh) | 一年間の電気代(円) |
---|---|---|---|
スマートスピーカー | 3,214 | 1~2 | 14.3~28.5 |
カーテン自動開閉装置 | 6,142 | 3
| 42.7 |
8畳用調光調色可能 LED シーリングライト | 6,630 | 2.2 | 31.3 |
合計 | 15,986 | 6.5~7.5 | 88.3~102.5 |
《時短効果試算》
以下二つのシナリオで計算します
- 毎日7時にカーテンを開けて、21時にカーテンを閉める
- 毎日18時に照明をつける
アクション | 一日所要時間(秒) |
---|---|
朝にカーテンを開ける | 8
|
夜にカーテンを閉める | 8
|
夕方に照明をつける | 3 |
合計 | 19 |
一年間の所要時間(時間) = 一日の所要時間(秒) ÷ 3600 × 365
= 19 ÷ 3600 × 365
= 1.92時間
《まとめ》
一番基本なパターンで、1年間で2時間ほど、お得になりましたね。センサーの活用やデバイスの組み合わせ方によっては多くの時間が得られるでしょう。
日々の作業時間の削減し、趣味や育児を中断せずに済む効果はとても大きいでしょう。
スマートホームをより簡単に導入
これまでの内容では、実際のスマートホームの利用イメージをお伝えしましたが、初期設定やデバイスの連携に不安を感じている方もいるかもしれません。 そこで、2022年に登場したスマートホーム規格「Matter※」がその不安を解消する手助けとなるでしょう。
- Matterは、Connectivity Standards Allianceの商標です。
スマートホームネットワーク規格「Matter」とは
2022年10月に登場したスマート家電の共通規格です。これまで各社が独自に進めていたスマートホームネットワークが一つにまとまり、ユーザーの利便性が一気に向上しました。Matterを管理運営する組織が独立しているため、より広く、透明性の高い運営や管理が行われています。
Matter対応スマート家電の利点
①家電連携によるワークライフバランスの向上
Matter対応スマート家電を使用することで、異なるメーカーの機器同士でも連携動作が可能になります。これにより、家事のストレスを軽減し、自動化によって自分の時間を確保する余裕が生まれます。また、親が不在の時の子供の様子や、離れた場所で暮らす両親や家族の様子を見守ることができます。
Matter規格の登場により、スマートホームの利便性が一段と向上し、より多くの人々が快適で安全な生活を送ることができるでしょう。

例1 : スマートフォンへ音声制御「ただいま」⇒照明点灯、施錠、カーテンを閉める

例2 : 環境センサー 温度上昇を検知 ⇒エアコンの冷房稼働、スマートフォンへ通知

例3 : 空気清浄機 二酸化炭素の上昇・空気質低下を検知 →扇風機ON、エアコンの送風稼働
②簡素化された導入・使用方法
通信は無線なので、住宅の大規模な工事が不要です。そのため、賃貸物件でも導入や元の状態に戻すことが容易であり、住み始めてからMatter対応のスマート家電を設置できます。
また、従来のスマート家電と異なり、各メーカーの独自アプリのインストールやユーザー登録、ネットワークの設定などが不要です。スマートフォンの標準ホームアプリを使用し、QRコードを読み取るだけでスマート家電のネットワーク設定が完了します。
さらに、Matterは世界共通の規格であり、最新のセキュリティ対策が施されています。Matterの標準化団体Connectivity Standards
Allianceが認定した製品にはMatterのロゴが付いており、情報漏洩や偽物のリスクが大幅に低減され、安心して使用することができます。
今後の展望
IoT技術は産業だけでなく、日常生活においても重要な役割を果たすことが期待されています。
Matter(※1)はスマートホームの共通規格として、現在は対応する機器の拡充や機能追加を進めており、さらに皆様のワークライフバランスを向上させてくれます。具体的には以下の4つがあります。
①デバイスの設定を簡単に行える
誰もが手軽にスマートホームを導入できます
②誰もが手軽にスマートホームを導入できる
サポートするデバイスの種類が増え、異なるメーカー製品をシームレスに連携させることができます

デバイス連携イメージ図
③セキュリティに対する信頼性が高まる
プライベートデータが保護され、デバイス利用時の安心感が増します
④追加インストールなしの一元管理ができる
iOS(※2)やAndroid(※3)ではすでにMatterの機能を内蔵化しており、使いやすいアプリが用意されています

スマホアプリのスマートホーム制御画面イメージ図
- Matterは、Connectivity Standards Allianceの商標です。
- iOSは、Apple Inc.のOS名称ですが、米国その他の国ではCisco Systems, Inc.またはその関連会社の商標または登録商標です。
- Androidは、Google LLCの商標または登録商標です。
ネクスティ エレクトロニクスの取り組み
株式会社ネクスティ エレクトロニクスは、豊田通商グループのエレクトロニクス事業の中核企業として、カーエレクトロニクスの分野においてトップクラスの規模を誇ります。技術と商材を核として、幅広い分野でお客さまや世の中のニーズに応え、 社会課題のソリューションを提供しています。
近年は日本でのスマートホーム標準規格「Matter」※の発展に注力しており、2024年3月にMatterの標準化団体Connectivity Standards Alliance(CSA)に加盟しました。
- Matterは、Connectivity Standards Allianceの商標です。
- iOSは、Apple Inc.のOS名称ですが、米国その他の国ではCisco Systems, Inc.またはその関連会社の商標または登録商標です。
- Androidは、Google LLCの商標または登録商標です。
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