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Vishay Intertechnology, Inc.

Vishay IHLE® 電界シールド付きパワーインダクタの実力とは? EMI対策と省スペース設計を両立する次世代ソリューション

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EMI対策の“最後の砦”をどう選ぶか?

スイッチング電源やマイコンを搭載した電子機器では、EMI(Electromagnetic Interference:電磁妨害)によるノイズが周辺回路や通信機器に干渉し、誤動作や通信障害を引き起こすリスクがあります。そのため、EMI対策は製品設計の初期段階から重要な検討項目となっています。
特に車載機器や産業機器では、EMC(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)規格への適合が厳しく、CISPR25 Class 5のような高水準のノイズ制限が求められます。そのため、ノイズ対策として金属シールドの追加や、ノイズ源からの距離を確保するための複雑な基板レイアウトが必要になるケースも多く、設計の自由度やコストに大きな影響を与えています。
こうしたEMI対策における設計上の課題を解決する新たなアプローチとして注目されているのが、VishayのIHLE®シリーズです。IHLEは、従来の磁界(Bフィールド)対策に加え、静電気的なノイズ成分である電界(Eフィールド)も抑制する専用のシールドをインダクタ本体に一体化。これにより、外付けの金属シールドを使用せずにEMI対策を実現できる、画期的な構造を備えています。
本コラムでは、IHLEシリーズの構造やノイズ低減効果、応用事例、他製品との比較を通じて、EMI対策における製品選定のヒントを提供します。EMC設計に課題を抱える開発エンジニアの皆様にとって、実務に直結する情報をお届けします。

技術解説|電界シールドを統合したIHLEの構造と効果

電磁界の発生とその影響

電子回路に電流が流れると、必ず2種類の電磁界が発生します。1つは磁界(Bフィールド)で、もう1つは電界(Eフィールド)です。これらは互いに直角の方向に広がり、周囲の電子部品に影響を及ぼす可能性があります。
磁界はモーターやトランスの動作に欠かせない重要な要素ですが、制御が不十分だと周囲の配線や部品に不要な電圧を発生させ、ノイズの原因となります。一方、電界は静電気や無線通信の基本原理として重要な役割を果たしますが、電子回路内で適切に制御されないと、不要な放射ノイズとして周囲の回路や通信機器に干渉し、EMIの原因となります。

IHLEの革新:Eフィールドシールドの統合

従来、磁界の漏洩を抑制するためには、磁性材料でコイル全体を包み込む「シールドインダクタ」が一般的に使用されてきました。VishayのIHLP®シリーズはその代表例で、磁性樹脂でコイル全体を包み込むモールド構造を採用しており、Bフィールドの漏洩を大幅に抑制します。
ただし、IHLPのような構造では磁界の抑制には効果的である一方、電界の放射までは十分に抑えきれず、基板上に別途金属シールドを設ける必要がありました。このような追加対策は、部品点数の増加や実装面積の拡大、さらにはコストの上昇といった新たな課題を引き起こしていました。
IHLEシリーズは、IHLPインダクタの上部に銅製の電界シールドを一体化した構造を採用しており、これによりEフィールドの放射を最大20dB低減する高いノイズ抑制効果を発揮します。このシールドはニッケルとスズで表面処理され、基板上のグランドに接続することで効果を発揮します。
この構造により、インダクタの高さはわずか0.3mm増加するのみで、IHLPシリーズと同等のインダクタンス、定格電流、直流抵抗(DCR)を維持。既存設計からの置き換えもスムーズに行えます。

実測データが示すノイズ低減効果

Vishayの社内評価によると、DC/DCコンバーター回路において、同一サイズ・同一インダクタンスのインダクタを比較した結果、IHLEはフェライトコアインダクタやIHLPと比べて最も低い放射ノイズを示しました。
1cmの距離に設置した検出コイルで測定した誘導電圧は、フェライトコアインダクタが約3.4mV、IHLPが1.0mV、IHLEではわずか0.28mVと、Eフィールドの大幅な低減効果が定量的に確認されました。

フェライトタイプ、IHLP、IHLEのノイズレベルの比較

応用回路例|IHLEが活きる設計シーン

・車載DC/DCコンバーター

CISPR25 Class 5など、厳格なEMC規格への適合が求められる車載用途では、IHLEの最大20dBのEフィールド抑制性能が、放射ノイズの低減と外付けシールド不要による設計の簡素化に大きく貢献します。これにより、基板上の実装面積や部品点数の削減、コストダウンにもつながります。

・LEDドライバ回路

Vishayの評価によると、LEDドライバの評価ボードにおいて、他社製インダクタとIHLE4040DDを比較した結果、CISPR25 Class 5の測定条件下でIHLEは10dB以上低い放射ノイズを記録しました。ノイズ対策が重要なLED照明やディスプレイ駆動回路において、IHLEは高いEMI抑制効果を発揮する有力な選択肢です。

・産業用電源モジュール

IHLEは、車載電源や産業用電源などの高電流・高周波動作環境下でも安定した電気的性能を維持し、周辺回路へのノイズ干渉を効果的に抑制します。そのため、EMI対策にかかる設計工数や試作回数を削減でき、開発期間の短縮や製品化スピードの向上にもつながります。

・高周波デジタル計測器

オシロスコープやスペクトラムアナライザなどの高周波デジタル計測器では、微小な信号を正確に測定するため、外部からのノイズ影響を極限まで抑える必要があります。IHLEは、BフィールドとEフィールドの両方を効果的に抑制できるため、測定精度の確保と筐体内ノイズの最小化に貢献します。特に、シールド空間が限られる小型筐体内でのノイズ対策において、IHLEの一体型構造は大きなメリットとなります。

LEDドライバ回路におけるIHLEと他社製インダクタのEMCノイズ比較

製品ラインナップ|サイズと仕様の展開

IHLEシリーズは、現在量産中の4040サイズ(10×10×4.3mm)をはじめ、今後は5050(13×13mm)、3232(8×8mm)、2525(6.5×6.5mm)、2020(5×5mm)、1616(4×4mm)など、IHLPシリーズと同等のサイズラインナップへの展開が予定されています。
各サイズは、IHLPシリーズと同一のインダクタンス値、定格電流、直流抵抗(DCR)に対応しており、既存設計からの置き換えも容易です。これにより、設計の柔軟性を保ちながら、EMI対策を強化することが可能になります。

  • 外形写真

  • 外形図および高さ

パッケージ
サイズ
シリーズ名Vishay公式リンク
2020IHLE-2020CD-5Ahttps://www.vishay.com/en/product/34577/
2525IHLE‑2525CD‑5Ahttps://www.vishay.com/en/product/34388/
3232IHLE-3232DD-5Ahttps://www.vishay.com/en/product/34378/
4040IHLE-4040DD-5Ahttps://www.vishay.com/en/product/34380/
5050IHLE-5050FH-5Ahttps://www.vishay.com/en/product/34459/

パッケージサイズ別代表シリーズ名

他製品との比較|IHLE vs IHLP vs フェライトインダクタ

以下の比較表は、一般的なフェライトインダクタ、VishayのIHLPシリーズ、そしてIHLEシリーズの主な特性をまとめたものです。EMI対策や実装性の観点から、IHLEの優位性が明確に示されています。

 
特性フェライト(開磁路)IHLP(閉磁路)IHLE(閉磁路+Eシールド)
Bフィールド抑制△(漏洩大)◎(ほぼ封じ込め)◎(IHLPと同等)
Eフィールド抑制×◎(最大20dB低減)
外部シールドの必要性必要条件により必要原則不要
実装高さ標準標準+0.3mm(IHLP比)
機械的強度(耐振動性)△(2端子)◎(4端子構造)

まとめ|EMI対策の新定番、IHLEがもたらす設計の自由

EMI対策は、製品の信頼性を確保するだけでなく、基板設計の自由度、部品コスト、製品サイズ、さらには開発スピードにも大きな影響を与える重要な設計要素です。
VishayのIHLEシリーズは、電界シールドをインダクタ本体に一体化することで、EMIの主因であるEフィールドを最大20dB低減。従来の外付けシールドに頼らずにノイズ対策を実現できる、革新的なソリューションです。外部シールドが不要になることで、部品点数の削減や基板面積の有効活用が可能となり、設計の簡素化とコスト削減にもつながります。
IHLEシリーズは、IHLPの高い信頼性と電気的性能を継承しつつ、電界ノイズの抑制機能を強化したことで、EMI対策を必要とする現代の高密度実装に最適なパワーインダクタとなっています。
車載機器、産業用電源、LED照明など、厳しいノイズ要件が求められるアプリケーションにおいて、IHLEは設計の信頼性向上と効率化を同時に実現する、非常に有効なソリューションです。

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