広帯域センサーネットワークを実現する近距離無線規格
ZigBee概要
ZigBeeとは
ZigBee(読み方:じぐびー)は、省エネ、小型、安価が求められるIoT機器において、センサーネットワークの構築に適した近距離無線規格です。データ通信距離が短く、転送速度が遅く、データ転送容量も小さいですが、ライセンスフリーなので低コストであり、省電力なので電池駆動が可能で、電源起動が早いというメリットがあります。
ZigBee Alliance
2001年に設立されたZigBee
Alliance(ZigBeeの標準化団体)は、もともとは家電向けに策定された通信規格である「ZigBee」を、現在ではさまざまな無線センサーのノード同士で構築されるワイヤレスネットワーク向けに、仕様作成および、規格運用を行っています。
国内の団体は、ZigBee
SIGジャパンが主体となり、ZigBeeの促進活動を行っています。ZigBee標準化の特徴の1つとして、相互接続性を高めるために柔軟なプロファイルを規定しています。プロファイルとは、用途ごとに分類されたアプリケーション間の相互接続をスムーズにするための共通ルールです。Bluetoothなどの無線規格もプロファイルはありますが、標準化団体が定めたもの以外は認めないため、応用が困難となっています。
プロファイル
ZigBeeのプロファイルは、ZigBee Allianceが定めたPublic Profileのほかに、メーカーが開発公開したPublished Profile、メーカー独自運用のPrivate Profileの3種類が認定されています。たとえば、Public Profileとして定義されているHome Automation Profileがありますが、メーカーが製造者固有プロファイルの認定を受けることで、Private Profileとして新たに割り当てた番号を使えるようになります。ただし、Private Profileはメーカーが独自に策定し、公開の義務もないため、ZigBee AllianceがPrivate Profile用のネットワーク適合テスト仕様を策定し、Public Profile準拠製品と共存確認を行っています。
近距離無線規格
無線通信ネットワークの技術は、距離によって下図のように分類されます。中心を人間とすると、人間の周辺機器をネットワークする範囲として10m~20m前後をカバーするものを、無線PAN(Personal Area Network)といいます。一般的には、無線PANなどの通信距離が数10m前後の近距離無線通信技術を指しており、その主な技術として、ZigBeeやBluetooth、無線LANなどがあります。

図1:通信距離から見た無線ネットワーク
出典:「無線 PAN ⁄ LAN ⁄ MAN
⁄ WAN の最新技術動向」、阪田史郎、2006 年
各技術の比較
種類 | ZigBee | Bluetooth | 無線LAN | 電子タグ(パッシプタグ) |
---|---|---|---|---|
規格 | IEEE802.15.4 | IEEE802.15.1 | IEEE802.11b ⁄ a ⁄ g |
ISO ⁄ IEC15693X ISO ⁄ IEC18000 |
周波数 | 2.4GHz | 2.4GHz |
2.4GHz 5GHz |
135kHz 13.56MHz 2.45GHz |
到達距離 | 10m~75m程度 | 10m~100m程度 | 100m~300m程度 | 密着~数m程度 |
伝送速度 | 250kbps | 1Mbps |
11Mbps 54Mbps | - |
消費電力 | 60mW以下 | 120mW以下 | 3W程度 | 0 |
小型/軽量 | 小型/軽量 | 小型/軽量 | 小型 | 超小型 |
価格 | 安価 | 安価 | 安価 | 安価 |
接続数 | 約65,000個 | 最大7個 | 最大32個 | - リーダーとの接続のみ |
IEEE802.15.4
ZigBeeの基本的な電気的仕様は、IEEE802.15.4として規格化されています。論理層以上の機器間の通信プロトコルはZigBeeアライアンス(ZigBee Alliance)が仕様を策定します。もともとは、ZigBee以前に家電ネットワーク向けの通信規格として検討されていたHomeRF Liteの技術を転用しています。
デバイスタイプ
ZigBeeで使われるデバイスは、物理デバイスと論理デバイスがあります。
物理デバイス
IEEE802.15.4の規定に従い、全機能を備えたFFD(Full-Function Device)とコストダウンなどを目的に機能を制限したRFD(Reduced-Function Device)の2つに分けられます。ルータ機能を搭載するFFDは、ZigBeeネットワークの重要な位置づけとなります。一方、ルータ機能をもたないRFDは、エンドポイント端末用として親となるFFDとのみ通信を行います。
物理デバイスタイプ | FFD | RFD |
---|---|---|
ルータ機能 | ○ | × |
コーディネータ | ○ | × |
ルータ | ○ | × |
エンドポイント | ○ | ○ |
論理デバイス
ネットワーク内では、ZigBeeコーディネータ(ZC)、ZigBeeルータ(ZR)、ZigBeeエンドポイント(ZED)の3つの役割に分けられます。コーディネータは必ずネットワーク内に1台のみ存在し、ネットワークを立ち上げる機能を持ちます。ルータはネットワーク内に複数台存在でき、データ転送機能によって次々とノードにデータを渡していくマルチホップネットワークを実現します。これらは物理デバイスのFFDであることが条件となります。
論理デバイスタイプ | ZigBeeコーディネータ | ZigBeeルータ | ZigBeeエンドポイント |
---|---|---|---|
ネットワーク立ち上げ | ○ | × | × |
ルータ機能 | ○ | ○ | × |
ピーコン発行 | ○ | ○ | × |
管理範囲 | すべてのノード | 自身の子ノード | 自身 |
ネットワークトポロジー
ZigBeeには、スター型、ツリー型、メッシュ型の3つのネットワーク方式があります。他の無線ネットワークにはない特徴として、メッシュネットワークを構築できることが挙げられます。
スター型は、中心にZigBeeコーディネータ(ZigBeeルータ)があり、その周囲にZigBeeエンドポイントを配置することで、通信は1ホップのみのシンプルなネットワークとなります。通信が必要なときだけ起動するエンドポイントは、省電力なネットワークを構成できます。
ツリー型は、スター型のノードに親子関係を持たせ、親が子のアドレスをアサインします。ツリーの深さと子デバイス数から重複なくアドレスが生成できるため、ネットワーク全体の情報を持つ必要がなくなり、メモリ消費量を増やさず大規模ネットワークが構成できます。
メッシュ型は、すべてのノードにルータ機能を持つFFDを配置し、アドレスが「乱数」で割り当てられ、動的な通信経路が形成されます。これにより、ノード全てが相互接続機能を持ち、広範囲に接続が可能となり、通信障害が発生しても容易に迂回経路を確保できます。ただし、ノードの省電力化が困難となり、消費電力が大きくなります。
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