特性や内部構造による分類法
前回は、「入出力電圧範囲によるオペアンプの分類」を紹介しました。
今回は使用目的に合わせてオペアンプを選定するために役に立つ、特性による分類を紹介します。
多数あるオペアンプ製品の中から用途、要求に合わせて選定する際、ある程度絞り込んでから特性を確認する方が効率がよいでしょう。そんなとき、特性による分類方法によって絞り込みをするのが便利でしょう。
特性による分類
例えばオペアンプ製品のデータシートの電気的特性を確認するとわかるように、オペアンプにはさまざまな特性があります。
特に優れた特性を取って、オペアンプを分類する方法があります。
ただし、これらは明確な基準があるわけではなく、オペアンプの各サプライヤーがホームページ上で分類していることが多いです。
その中で比較的一般的な分類について以下で説明をしていきます。
まず最初に、特別な特性を持たない一般的なオペアンプを「汎用オペアンプ」と定義します。特性による分類はこの汎用オペアンプに対して、特性特化したオペアンプと考えることができます。

汎用オペアンプ
汎用オペアンプに明確な定義はなくあいまいですが、増幅、バッファリングなど一般的な要求、用途で使用する比較的安価なオペアンプと理解して問題ないでしょう。
特筆する機能や性能はないが、一般的な用途で使用するオペアンプとも言えます。
オペアンプの使用用途によっては、特定の性能が必要となる場合があります。
例えば、高周波の信号を扱う場合、扱える信号の帯域が広くなくてはいけません、また、医療機器や測定器などで微小な信号を扱う場合や高い精度を求められるケースもあります。
このような汎用オペアンプでは、特定の性能が満たせない場合、特定の性能に特化した高性能オペアンプを利用するとよいでしょう。
このようにオペアンプの持つ特性に着目して分類した場合、主に以下のような種類に分けられます。
1.高精度オペアンプ
- オフセット電圧が小さい
- 電圧利得(オープンループゲイン)が大きい
- 特性の温度ドリフト、経時変化が小さい
医療機器や測定器などの微小な信号を扱う場合、そのシステムの性能に直接誤差として影響してしまうオフセットや温度変化、経時変化を極力抑えたオペアンプです。
2.高速オペアンプ
- スルーレートが大きい
扱う信号の周波数が高い場合、出力波形の立ち上がり、立下りスルーレートは大きくなります。
スルーレートが小さいと波形が歪んでしまうため、高周波の信号を扱う場合、帯域だけでなくスルーレートも抑えておく必要があります。
3.広帯域オペアンプ
- 帯域幅が広い
無線や映像信号など高い周波数の信号を扱う場合、帯域幅の広いオペアンプが必要となります。
一般的に高周波の信号を扱うことを前提としている為、広帯域オペアンプ=高速オペアンプであることが多いようです。
その場合、高速オペアンプと呼び、その特徴として、帯域幅、スルーレートが大きなオペアンプとなるようです。
4.低ノイズオペアンプ
- 入力換算ノイズが小さい
- 低歪率
オーディオ、無線、医療機器用途など信号品質を保つことが必要な用途向けにノイズを抑制されたオペアンプです。
低周波での1/fノイズとオペアンプ全帯域での熱雑音と使用する帯域によってノイズの見え方が変わってくるため、注意が必要です。
5.低消費電力オペアンプ
- 動作時の消費電力が小さい
電池で駆動するモバイル機器向けなど消費電流を小さくする必要があります。
入力バイアス電流が小さく、より低消費電流に向いているCMOSプロセスで作られることが多いようです。
低電圧での動作にむいている製品が多く、Rail to Rail機能などを備えたものが多いのも特徴です。
6.高出力オペアンプ
- 出力電流が大きい
スピーカやモーターの駆動などでは大電力が必要となります。
通常オペアンプでは信号増幅のために大きな電力は必要となりません。大きな負荷を駆動するため、積極的に出力電流を流すように作られたもので「パワーアンプ」とも呼ばれます。
構造、内部素子による分類
オペアンプの特性を左右する入力段の素子による分類を紹介します。
素子のもつ特性によってオペアンプの特性がきまるため、用途に合わせて選択するのがよいでしょう。
1.バイポーラプロセス
入力段にバイポーラトランジスタが使われる
【特長】
- 電流駆動素子で入力バイアス電流はCMOS,JFETに比べ大きい
- 入力オフセット電圧が小さい
- 入力換算ノイズが小さい

2.CMOSプロセス
入力段にCMOSが使われる
【特長】
- 電圧駆動素子で入力バイアス電流がバイポーラに比べ小さい
- 入力オフセット電圧が比較的大きい
3.JFETプロセス
入力段にJFETが使われる
【特長】
- 電圧駆動素子で入力バイアス電流がバイポーラに比べ小さい
- スルーレートが高い
- 入力オフセット電圧がバイポーラに比べ大きい
このように分類の方法も多くあり、用途や目的に合わせて検索することで、より短時間で最適なオペアンプを探し出せるようになるでしょう。
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