無線通信分野では、アンテナは必要不可欠な技術であり、用途、周波数においてさまざまなアンテナが存在します。
本コラムは、「アンテナの基本」、「アレイアンテナ」、「パターンアンテナの設計手順」の3部構成でまとめたものとなり、今回は「アンテナの基本」について説明します。
基本アンテナ
基本アンテナには1/4波長モノポールアンテナと1/2波長ダイポールアンテナがあります
- アンテナの寸法
使用する電波の波長からアンテナの長さも決まり、波長が長ければアンテナは長くなり、波長が短ければ、アンテナも短くなります。
空中の置かれているアンテナには数々の電波により、誘導起電力が生じます。
これらの中から希望する電波の周波数に共振させる必要があります。
- 1/4波長モノポールアンテナ
図1に示すように1/4波長の長さの導線垂直に設置したものです。
高周波電流を加えると、電流分布は図1に示すように、電流は基部で最大、先端部で0になります。
接地アンテナでは、1/4波長の時を固有周波数といい、その時の波長を固有波長といいます。
- 1/2波長ダイポールアンテナ
1/2波長ダイポールアンテナは図2に示すように長さが1/2波長の導線を空中に展張した非接地アンテナです。
高周波電流を加えると電流分布は図2に示すようになり、電流は中心部で最大、先端部で0になります。
1/2波長ダイポールアンテナは、波長をλ(ラムダ)とするとλ/2に対応する周波数が基本周波数ですが、λ/2の整数倍の周波数でも共振します。
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図1 1/4波長モノポールアンテナ
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図2 1/2波長ダイポールアンテナ
アンテナの指向性
「特定の方向にどの程度電波を集中して放射することができるか」を示すのがアンテナの指向性です。
アンテナがどの程度の方向に電波を集中して放射できるかを示すのが、アンテナの指向性です。
一般の放送局やタクシー無線などのアンテナは図3に示す全方向性(無指向性)アンテナが適しています。
一方、移動することのない、特定の相手との通信は他の無線局に妨害を与えにくい、図4に示す単一方向性アンテナを使用することが望まれます。
図4の0°方向の一番大きな放射パターンを主ローブ、180°方向の後側の放射パターンをバックローブ、他のローブをサイドローブといいます。
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図3 全指向性(無指向性)アンテナ
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図4 単一指向性アンテナ
アンテナの利得
基準アンテナに電力P0[W]を供給、被測定アンテナに電力P[W]を供給し同一地点で同じ電界強度が生じるとき、P0/Pをアンテナの利得と呼びます。
- 相対利得と絶対利得
アンテナの利得はアンテナの性能を表す指標のひとつで、利得の大きなアンテナを使うと、小電力でも電波を遠方に伝えることができます。
利得は、基準アンテナと供試アンテナに等しい電力を与えたとき、最大放射方向の同じ距離における電界強度の比で求めるか、または最大放射方向の同じ距離における電界強度が等しくなる任意アンテナから放射アンテナから放射される電力P[W]と基準アンテナから放射される電力P0[W]の比P0/Pから求められます。
半波長ダイポールアンテナを基準アンテナにした利得を相対利得Gr(relative gain)、等方向性アンテナを基準とした利得を絶対利得Ga(absolute
gain)と呼びます。
GaとGrの関係はGa=1.64GrまたはGa=Gr+2.25[dB]
- 電波法施行規則で定めるアンテナ利得
電波法施行規則第2条74では次のように規定されています。
「空中線の利得とは、与えられた空中線の入力部に供給される電力に対する、与えられた方向において、同一の距離で同一の電界を生ずるために、基準空中線の入力部で必要とする電力の比をいう。この場合において、別段の定めがないときは、空中線の利得を表す数値は、主輻射の方向における利得を示す。」
アンテナの種類(構造)
無線技術の進歩にともなって、多種多様なアンテナがさまざまな用途で使われています。
線状アンテナとして、基本的な構造を以下に示します。
引用:NTT Docomoテクニカルジャーナル Vol.5 No.3

図5 様々なアンテナの構造図
アンテナの種類(特徴 用途)
図5の構造について、その特徴と用途を表1に示します。
引用:NTT Docomoテクニカルジャーナル Vol.5 No.3

表1 アンテナの特徴と用途
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