無線通信分野では、アンテナは必要不可欠な技術であり、用途、周波数においてさまざまなアンテナが存在します。
本コラムは、「アンテナの基本」、「アレイアンテナ」、「パターンアンテナの設計手順」の3部構成でまとめたものとなり、今回は「パターンアンテナの設計手順」について説明します。
パターンアンテナと小型化パターンアンテナ
パターンアンテナは基板等にパターンを描いて構成するアンテナです。コスト低減や機器の小型化に貢献できるので、アンテナの主流とも言えます。
今回は代表的なものとして、ミアンダ化アンテナについて主に説明します。
- パターンアンテナ
-最も単純なアンテナ設計方法として、ダイポールアンテナやモノポールアンテナを基板の配線パターン で形成することが考えられます。
-
図1 縦型ミアンダ化モノポールアンテナ
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図2 横型ミアンダ化モノポールアンテナ
アンテナ特性パラメーターと評価方法
アンテナの設計と評価する上で、必要なパラメーターを説明します。
- 電圧定在波比(VSWR)
-電圧定在波比 (VSWR: Voltage Standing Wave Ratio)
は、アンテナ給電点へ入力した電力がどれだけの割合でアンテナへ入力されているかのパラメーターです。
-実際には、ネットワーク・アナライザを用いてVSWRを測定します。
-必要帯域でVSWR < 2または< 3 の共振周波数特性を得るように、アンテナの設計と調整を行います。
-VSWR=2 のときアンテナに入力される電力は約89%、VSWR=3 のとき電力は約75 %になります。
- インピーダンス特性(スミス・チャート)
-インピーダンス特性は、ネットワーク・アナライザでS11特性を測定して得られます。
-インピーダンスはZ = R + jX で表され、実部の値はR、虚部の値はXになります。
-VSWR 値が高い場合、共振周波数のピークが目標の周波数帯域にあっても、一般にインピーダンスが50Ωからずれます。
-この場合スミス・チャートを用いて、インピーダンスZ を50Ω に近づける(アンテナ・マッチングを取る)ことが必要です。
図3 VSWRとインピーダンスの測定例
アンテナ特性パラメーターと評価方法
評価方法として、指向特性の測定環境を記載します。
- 指向特性
-アンテナの指向特性は、図4のような測定環境で測定します。
-このような測定環境は6面電波暗室と呼び、全方向の電波反射を防いだシールド・ルームになっています。
-6面暗室で得られた指向特性測定結果の例を図5に示します。
-これらの指向特性が設計通りかを確認し、また平均利得や最大利得を検証します。
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図4 指向特性の測定環境例
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図5 指向特性測定結果例
パターンアンテナの設計例
パターンアンテナの設計例として、細形ミアンダアンテナの設計例を示します。
-低く小型のアンテナです。
-基板両面のミアンダ構造により、アンテナを小型化できます。
-アンテナ・エリア寸法:6×10㎜
-VSWR<2 帯域幅:約320MHz
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図6 細形ミアンダの外観
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図7 アンテナエレメントの寸法図
引用:Renesas Bluetooth Low Energy マイコン アプリケーションノート
細形ミアンダアンテナのVSWRと指向特性を示します。
図8 VSWR特性例
図9 指向特性例
引用:Renesas Bluetooth Low Energy マイコン アプリケーションノート
パターンアンテナ設計の手順
アンテナ設計の手順と注意点を以下に示します。
システムについて、放射特性、偏波特性、アンテナ領域の面積と容積、通信距離などの仕様を検討し、最適なアンテナを選定します。
モノポールアンテナを基本とする線状アンテナ(逆 L, 逆 F, ミアンダ等)とチップアンテナの場合、イメージ効果を形成するために、波長に対する十分な大きさGNDが必要です。
小型パターン・アンテナの設計例を用いて、電磁界シミュレーターへのモデリングまたはアンテナを実装した基板を試作します。GNDサイズ、アンテナの配置位置、アンテナへの筐体近接、金属の近接などが、アンテナ特性に影響する可能性があるので、筐体材質の選定やアンテナ近傍への部品配置を十分に考慮します。
ほとんどの場合、システム基板にアンテナを実装後、マッチング調整が必要です。VSWR, S11 スミス・チャートを評価し、VSWR<2 または<3 を目標にマッチングさせます。
アンテナ・エレメント長の調整や、定数の追加による方法で、マッチングさせることができます。
また、筐体まで含めたシステムの組立状態でマッチングさせます。
マッチング調整後、指向特性を測定します。最大利得、平均利得、放射方向を評価し、意図する通信距離を得られるか確認します。
また最大利得は、電波法申請時にも必要になります。
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