ネクスティ エレクトロニクスの開発部隊による技術ブログになります。
当社取り扱い商材を活用したハードウェア、ソフトウェア開発の内容を発信します。
今回はExeger Operations
ABの屋内外光太陽電池「PowerfoyleTM」、日本ガイシ株式会社※1の超薄型・小型リチウムイオン二次電池「EnerCera®」、日清紡マイクロデバイス株式会社のエナジーハーベスト用電源ICを活用し、BLEマイコン及び各種センサーデバイスを駆動し続けることを目指したバッテリー交換不要IoTシステムを開発したので紹介します。
※1:2026/4/1よりNGK株式会社に変更
ソリューション紹介
工場や倉庫をはじめとする各種施設では、センサーデバイスや通信機能を備えたIoTデバイスの導入が進んでいます。しかし、バッテリー駆動のデバイスでは定期的なバッテリー交換が必要となり、交換作業の工数増加や、設置場所によっては安全面のリスクが発生する場合があります。
そこで当社では、屋内環境でも発電可能なエネルギーハーベスティング技術を活用し、バッテリー交換を不要とするIoTシステムの開発に取り組みました。
概要
Exeger Operations ABの屋内外光太陽電池「PowerfoyleTM」で発電し日清紡マイクロデバイス株式会社のエナジーハーベスト用電源ICで電圧変換した電力を日本ガイシ株式会社の超薄型・小型リチウムイオン二次電池「EnerCera®」に充電し、 その電力を使用してマイコン及び各種センサーデバイスを駆動します。
特徴
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Powerfoyleからの常時給電によりEnerCeraへ充電しながらマイコンやセンサーデバイスへ電源供給するため、 マイコンやセンサーデバイスを 間欠動作させてEnerCeraに対して「消費電力<充電電力」の条件を満たすことによってバッテリー交換せずに半永久的にマイコンやセンサーデバイスを動作させることが可能です。
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今回使用しているPowerfoyle-Indoorという製品は屋内外光で動作します。1cm2当たりの標準的な発電量は下記の通りです。
引用元: https://www.exeger.com/uploads/2023/12/Product-Brief-Powerfoyle-Indoor-v3.0.pdf
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今回のシステムでは小型で省電力なIoT試作向けプラットフォームのLeafony※2を活用しており、さまざまなセンサーのシステムをはんだ付け不要で容易に構成可能です。(対応するソフト開発は別途必要)
※2:「Leafony」は、LEAFONY SYSTEMS株式会社の登録商標です。
システム構成
システムブロック図
今回開発したシステムのブロック図は下記になります。
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Powerfoyleユニット
Powerfoyleで発電し、EnerCeraに充電した電力を使用してBLEマイコン及び各種センサーデバイスを駆動するユニットです。
Powerfoyleで発電した約0.6Vの電圧を日清紡マイクロデバイス社の昇圧DC/DCコンバータで2.7Vに昇圧し、EnerCeraへ充電します。(EnerCeraの充電電圧は2.7Vになります。)
センサーは加速度センサー、気圧センサー、温湿度センサー、照度センサーを搭載しています。加速度センサーについてはシステムを動かした際の加速度データを随時BLEマイコンで取得し、BLEのアドバタイズ信号に加速度データを含めた状態でブロードキャスト送信します。気圧センサー、温湿度センサー、照度センサーについては3分に1回の間欠動作で各センサーのデータをBLEマイコンで取得し、BLEのアドバタイズ信号に各センサーデータを含めた状態でブロードキャスト送信します。 -
電圧/電流測定ユニット
Powerfoyleの発電量やEnerCeraの充放電量を正確に可視化するための、Powerfoyleユニットとは独立した電源(CR2032ボタン電池)で動作するユニットです。Powerfoyle用、EnerCera用に別々の電流センサーを用意し、取得した電圧/電流をLCD上に表示します。 -
Android Application
Powerfoyleユニットで取得しBLEマイコンから送信された各センサーデータを受信したAndroid端末のアプリ上で、センサーデータの閲覧が可能です。 -
Dashboard
Android Application同様、BLEマイコンから送信された各センサーデータを受信したGatewayを経由してクラウド(AWS)に転送されたセンサーデータをDashboard上で閲覧可能です。
システム外観写真
キーアイテムの紹介
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屋内外光太陽電池「PowerfoyleTM」
・メーカー:Exeger Operations AB
・型番:Powerfoyle-Indoor
・特徴:セルサイズ約16cm2、標準発電量480uW(500lux時)
・説明:色素を使って光を吸収し、そのエネルギーで電子を発生させるため、室内光でも発電できる次世代型の太陽電池です。軽量で柔軟性がありデザインの自由度が高く、耐久性に優れた再生可能エネルギーソリューションです。
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超薄型・小型リチウムイオン二次電池「EnerCera®」
・メーカー:日本ガイシ株式会社
・型番: ET382704P-H
・特徴:公称容量20mAh、2.7V定電圧充電、放電電流40mA(標準)、300mA(ピーク)
・説明:キャパシタとリチウムイオン二次電池の長所をあわせ持つ超小型・薄型二次電池です。超薄型のため曲げることができ、自己放電が少なく、太陽電池などの微弱な発電も漏れなく充電できます。安全性にも優れています。
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エナジーハーベスト用低消費電流昇圧DC-DCコンバーター
・メーカー:日清紡マイクロデバイス株式会社
・型番:R1810Z026A
・特徴:低消費電流(IQ:600nA)、9µW(低照度)で起動
・説明:太陽電池が発電した微小な電力を実用的な電圧に変換するデバイスです。低消費電流と発電効率の最大化を実現する制御機能を搭載しています。
システム動作紹介
今回ご紹介したバッテリー交換不要IoTシステムの動作について紹介します。
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Powerfoyleユニットでのセンサーデータ送信
Powerfoyleユニットに搭載されている加速度センサー、気圧センサー、温湿度センサー、照度センサーから取得したデータをBLEのアドバタイズ信号経由でAndroid端末又はGatewayへ送信します。
Powerfoyleユニットの電源スイッチをONします。BLEマイコン及び各センサーデバイスに給電され、Androidアプリ上又はGateway経由でDashboard上でのセンサーデータの確認が可能となります。気圧センサー、温湿度センサー、照度センサーについては3分間隔で間欠動作し、加速度センサーについては0.5G検出時のリアルタイム動作となります。
Androidアプリ上には下記のように取得したセンサーデータが表示されます。
Dashboard上には下記のように取得したセンサーデータが表示されます。
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電圧/電流測定ユニットでのPowerfoyle/EnerCeraの電圧/電流測定
電圧/電流測定ユニットに搭載されている電流センサーでPowerfoyleの発電量や、EnerCeraの充放電量を測定し、同ユニット上のLCDに測定結果を表示します。
電圧/電流測定ユニットの電源スイッチをONします。
LCDに「Hello! Wait!!」と表示された後、EnerCeraの充放電電圧/電流、Powerfoyleの発電電圧/電流が3秒間隔で交互に表示されます。
バッテリー交換不要となる条件について
今回のシステムで、太陽電池「Powerfoyle」と二次電池「EnerCera」を組み合わせることで、バッテリー交換不要を実現するための消費電力および充電電力の条件を検証しました。これらの条件について、机上での計算検証と実機による動作確認を行い、システムとしての実現性を確認しました。
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机上検証
バッテリー交換不要とするためには、EnerCeraに対して「消費電力<充電電力」の条件を満たす動作をする必要があります。
①1時間当たりの消費電力算出
Powerfoyleユニットで使用しているBLEマイコンや各種センサーの1時間当たりの稼働時間とデータシートに記載の消費電流(一部実測)により、1時間当たりの消費電力を算出しました。BLEマイコンや各種センサーの電源である3.3Vを生成しているDC/DCコンバータの効率85%も加味しています。
1時間当たりの消費電流
| 加速度センサーアクティブ時の1時間当たりの消費電流 | 0.0000003 mAh |
| 気圧センサーアクティブ時の1時間当たりの消費電流 | 0.00002025 mAh |
| 温湿度/照度センサーアクティブ時の1時間当たりの消費電流 | 0.00001792 mAh |
| BLEマイコンアクティブ時(BLE通信時)の1時間当たりの消費電流 | 0.0461 mAh |
| アイドル時の1時間当たりの消費電流 | 0.0000525 mAh |
| スリープ時の1時間当たりの消費電流 | 0.6892 mAh |
| 1時間当たりの消費電流合計 | 0.7354 mAh |
1時間当たりの消費電力
| 負荷(BLEマイコン、各種センサー)の電源電圧 | 3.3 V |
| 1時間当たりの消費電流合計 | 0.7354 mAh |
| 1時間当たりの消費電力 | 2.427 mWh |
| 1時間当たりの消費電力 (3.3Vを生成しているDC/DCコンバータの効率85%も加味) | 2.855 mWh |
⇒ 1時間当たりの消費電力:2.855mWh
②発電に必要な照度の検討
Powerfoyleによる発電で①に記載の1時間当たりの消費電力を上回る充電電力が得られると考えられる照度を下記グラフの情報を元に検討しました。
引用元: https://www.exeger.com/uploads/2023/12/Product-Brief-Powerfoyle-Indoor-v3.0.pdf
照度100Luxで照らした場合1cm2当たり約6uW発電可能ですが、今回使用するPowerfoyleのサイズは約16cm2の為、16倍の約96uWが発電可能となります。計算の結果、1時間当たりの消費電力(2.855mWh)を上回る充電電力を得るには、4300Luxの照度が必要となります。(詳細は下記)
⇒100Lux時に96uWの発電が可能となる為、4300Lux時には単純計算で4.128mWの発電量となります。これにPowerfoyleが発電した0.6Vを2.7Vへ昇圧するDC/DCコンバータの効率70%も加味すると、4300Lux時に2.889mWの充電電力が得られると想定されます。
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実機動作確認
Powerfoyleユニットの実機動作※3にて、照度4300Lux時にEnerCeraに対して「消費電力<充電電力」の条件を満たせるかを確認しました。
※3:気圧センサー、温湿度センサー、照度センサーから3分間隔でデータを取得し、BLEのアドバタイズ信号にてデータ送信実施
①動作確認環境準備
下記写真のようにPowerfoyleユニットの上部にLEDライトを設置し、照度計で照度を計りながらPowerfoyleの部分がおよそ4300Luxとなる高さに合わせました。
Powerfoyleユニットの電源スイッチをONし、動作確認開始前/開始後のEnerCeraの電圧を電圧/電流測定ユニットのLCDで確認しました。確認結果は下記になります。
動作確認開始前のEnerCeraの電圧:2.578V
動作確認開始直後のEnerCeraの電圧:2.575V
動作確認開始20分後のEnerCeraの電圧:2.578V
動作確認開始2時間後のEnerCeraの電圧:2.589V
動作確認開始4時間後のEnerCeraの電圧:2.604V
上記②の結果より、動作確認開始直後のみ電源ONによる一時的な電力消費により一旦EnerCeraの電圧は下がったものの、その後は少しずつ充電もされていることから、Powerfoyleユニットが動作しながらも机上検証の検討結果(照度4300Lux)の条件で充電電力が消費電力を上回っていることが確認できました。
まとめ
今回は、ネクスティエレクトロニクスが開発したバッテリー交換不要IoTシステムをご紹介しました。工場や倉庫などに設置されるさまざまなセンサーデバイスにおける電源の課題を解決し、持続可能なエネルギーソリューションを提供することで業務の効率化と、持続可能な運用を実現します。
記事に興味を持たれた方や、詳しい情報をお求めの方はお気軽にお問い合わせください。皆さまからのご質問やご意見をお待ちしております。
ネクスティ エレクトロニクスの取り組み
株式会社ネクスティ エレクトロニクスは、豊田通商グループのエレクトロニクス事業の中核企業として、カーエレクトロニクスの分野においてトップクラスの規模を誇ります。技術と商材を核として、幅広い分野でお客さまや世の中のニーズに応え、
社会課題のソリューションを提供し、より善き社会の実現に貢献していきます。
また、ネクスティ
エレクトロニクスの開発部隊では、取り扱い商材を活用した自社開発、受託開発(ハードウェア、ソフトウェア開発)なども実施しております。お客さまの困りごとなどの解決なども含め寄り添って対応いたしますので、お気軽にお問合せください。
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