通信分野、特に移動通信の分野においては、世代が進化するごとにデータ転送の高速/大容量化が進んでおり、それに伴い内蔵されるPLL(Phase Locked
Loop:位相同期ループ)も高速化が必要になっています。
本コラムでは、「PLLの基本」、「PLLの応答特性」「PLLの高速化・低雑音化手法」について、回を分けて解説します。
今回は「PLLの基本」について説明します。
PLLの使われ方
PLLは無線通信において、周波数変換の信号源として使われます。
こちらは無線機の受信部のブロック図です。
RF周波数をミキサに入力し、Lo1、Lo2周波数を入力することによりIF帯にダウンコンバートします。
Lo1、Lo2を生成するのがPLL回路です。
その他、マイコン内部のAD/DAのクロックやビットタイミング生成源、ジッタのクリーニング用途にも使われます。
仮にPLLを使わなかった場合は、水晶振動子を逓倍して希望周波数を生成できますが、希望周波数が複数ある場合は、それに応じて水晶振動子を搭載しなければならず回路規模が増大してしまいます。また、L(コイル)とC(コンデンサ)でVFO(Variable
Frequency Oscillator)と呼ばれる発振回路を作ることにより複数の周波数を生成できますが、温度などの環境変化で周波数を一定に生成することができません。
PLLの基本的な構成
一般的なPLLの基本構成を下記に示します。
一般的なPLLICの構成範囲
図は最も基本的なPLLで次に記す構成要素で成り立っています。
1.VCO : Voltage Controlled Oscillator(電圧制御発振器)
2.N: Divider(可変分周器)
3.PFD:Phase Frequency Detector(位相比較器)
4.CP : Charge Pump(チャージポンプ)
5.LF:Loop Filter(ループフィルタ)
PLL周波数シンセサイザはVCOの発振周波数を分周器で分周した信号fvと、基準周波数frを位相比較器で位相比較し、一致するようにVCOの周波数と位相を制御するもので、その結果、VCOの発振周波数RFoutを取り出すことができます。
周波数が一定に保たれるしくみ
PLLはどのように動くのか
VCO周波数が環境の変化でfr<fv、もしくはfr>fvとなりました。
↓
位相比較器PFDはfrと比較し、出力に誤差信号パルスが発生します。
↓
ループフィルタLFを通過して直流電圧Vtとなります。
↓
直流電圧VtはVCOを制御して周波数を低く、もしくは高くします。
↓
VCOの周波数が変化し、fr=fvの状態に戻します。
PLLは、自動制御回路として働いてくれる優れもの
VCO制御電圧の動き
VCOの制御電圧Vtの動きに注力します。
図は、電圧制御発振器VCOの制御電圧-出力周波数、V-F特性を示します。制御電圧が上がると、出力周波数も高くなる特性を持ちます。
今、VCOは青実線で示す特性で動いています。そして入力基準信号frの周波数がf1だと、制御電圧はV1となってロック状態にあります。
その後、温度の変動や経時によって、VCOのV-F特性がオレンジ破線で示す特性に変化してしまいました。 制御電圧V1 のままでは、VCOの周波数はf2と高い周波数になってしまいます。
そこでPLLは、入力基準信号frの周波数f1に戻す方向に、制御電圧を⊿Vだけ低い電圧V2をVCOに加えて周波数を下げ、周波数f1に戻してくれます。
各部の説明
位相比較器とチャージポンプ
InAはfrのパルス波を入力し、InBにはfvのパルス波が入力されます。
PFD(位相比較器)は、二つの入力信号の位相を比較し差分を出力します。
チャージポンプ(CP)は位相比較器の位相差に比例した電圧(または電流)を出力します。
CP出力のパルス平均量は位相差に比例します
上図はCPの出力です。パルス平均量は位相差に比例して、電流/位相が出力され、これは位相比較感度kpと呼ばれます。
伝達関数として、kp=mA/rad(電流/位相)が得られます。
閉帰還応答特性を決定づけるループフィルタ
LFはループフィルタと呼ばれ、CPの出力をVCO制御電圧Vtに変換するブロックです。
位相比較器パルス出力をVCO制御電圧Vtに変換します。
基本的には位相特性が補償されたLPFです。
伝達関数として、KF⇒V/mA(電圧/電流)が得られます。
高周波信号を発生させるVCO
VCO制御電圧Vtで出力周波数を制御します。
入出力特性が直線に近い方がPLL設計が容易です。
伝達関数として、Kv=Hz/V(周波数/電圧)が得られます。
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