入出力電圧範囲によるオペアンプの分類
一言でオペアンプと言っても、世の中には多種多様な製品が存在しています。
その呼び方もさまざまで、高速アンプ、高精度アンプなど特性で分類したり、バイポーラ、JFET、CMOSなどプロセスで分類するなどがあります。
今回は、オペアンプの種類を呼び示すときによく使われる入出力電圧範囲による分類を紹介します。
入出力電圧範囲による分類
入出力電圧範囲による分類法では、主に以下の3種類で呼び分けられます。
おそらくどれか1つは聞いたことがあるのではないでしょうか。
1.両電源オペアンプ
プラス、マイナスの「両電源」間での動作を基本としたオペアンプ
2.単電源オペアンプ
「単電源動作」が可能なオペアンプ
3.Rail to Railオペアンプ
入出力が正のレール(Rail)から負のレールまで扱うことのできるオペアンプ
下の図のようにGND(0V)を挟んだ+電圧と-電圧とをそれぞれ電源端子に接続して動作するオペアンプを両電源オペアンプ、GNDと+電圧、もしくはGNDと-電圧をそれぞれ電源端子に接続して動作するオペアンプが単源オペアンプと理解してしまいそうですが、これは正しい理解ではありません。
オペアンプの電源電圧はこの呼び名と直接関係しているわけではありません。
いずれのオペアンプも基本的にはプラスマイナス両電源を接続して動作することも、GNDとプラス電源、もしくはGNDとマイナス電源を接続して動作することもできるのです。
では、両電源、単電源と頭につけたこの呼び名は一体何を意味しているのでしょうか?
それには「単電源動作」を理解する必要があります。
オペアンプの主な機能に信号増幅があげられますが、0V付近の小さな信号を増幅するためにはプラスマイナス両極性の電源を使うことで、ちょうど入力信号は±電源の1/2あたりで扱うことができます。
これは一般的なオペアンプの増幅動作としてイメージしやすいでしょう。
この動作は両電源オペアンプも単電源オペアンプのどちらも実現可能です。
次にオペアンプの電源を単電源に置き換えてみます。オペアンプは両電源オペアンプ、単電源オペアンプどちらでも構いません。入力信号は電源レンジの1/2である+V/2とします。
こちらの使い方もどちらのオペアンプでも可能です。
電源レールのちょうど1/2あたりの信号を扱う場合、どちらのオペアンプも変わりありません。
しかし、次の図のように負のレール近くの信号を扱おうとすると話がかわってきます。
実は、両電源オペアンプでは、このような電源レール近くの信号を扱おうとすると、上の図の出力波形Voのようにはならず、意図しない波形になってしまいます。
これはオペアンプ内部の回路構成に起因したもので、異常ではありません。もともとオペアンプでは扱える電圧範囲がきまっていて、データシートにもそれぞれ規定されているのです。
そして、上の図のような単電源接続で0V付近の信号を理想通りに出力することを「単電源動作」と呼び、単電源動作ができるよう内部の回路を改良したオペアンプを単電源オペアンプと呼びます。
つまり、単電源で動作させたときに、0V付近の信号を扱うことのできるオペアンプが「単電源オペアンプ」であり0V付近の信号を扱おうとしたとき、プラスマイナス両方の電源を必要とする一般的なオペアンプのことを「両電源オペアンプ」と呼ぶのです。
これまで説明した両電源オペアンプ、単電源オペアンプは電源電圧範囲内のすべての信号を扱うことができません。両電源の場合、+V,-V付近の信号は扱えず、単電源の場合、+V付近の信号は扱えないといったところです。
どちらのオペアンプもプラスマイナス両電源接続した場合を想定すると実際に扱うことのできる電圧範囲は以下のようなイメージです。
電源(ここでは+V,-V)のことをレール(rail)と呼びますが、レール付近まで扱えるようにしたものをRail to Railオペアンプと呼びます。
このように扱える信号範囲のことをダイナミックレンジと呼び、一般的に
両電源オペアンプ < 単電源オペアンプ < Rail to Railオペアンプ
の順でダイナミックレンジは広くなります。
オペアンプの使い分け
ここで説明した3つのオペアンプですが、ダイナミックレンジだけをみればRail to Railオペアンプが優れているとも言えます。
しかし、どんな場合でもRail to Railが最適なわけではありません。
例えばオペアンプで信号増幅した後、ADCで読み取る場合、ADCの入力ダイナミックレンジを考える必要があります。
ADCが実際に扱うことのできる信号の電圧範囲のことですね。
せっかくRail to Railオペアンプを使っても、ADCの入力ダイナミックレンジがそれよりも狭いのであれば、Rail to Railオペアンプではなく両電源オペアンプで十分かもしれません。
両電源オペアンプの方が一般的には種類も多く、選択肢が広がります。結果的に性能、コストにより優れた製品に出会える可能性も高くなります。
ダイナミックレンジを意識し、オペアンプの特性を理解しておくことが最適なオペアンプに巡り合う近道です。
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