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NXP Semiconductors N.V.

NXPの信号改善機能(SIC)を搭載したCANトランシーバー製品の解説

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車載ネットワークで現在主流となっているCAN FD通信は、従来のCAN通信を拡張した通信仕様です。
CAN FD通信は、従来のCAN通信に比べて、大量のデータを高速で送受信することが可能になりますが、その際にバス通信ライン上に信号リンギングが発生して通信誤動作を引き起こす可能性があります。

これを解決するのがSIC(Signal Improvement Capability)でありCiA601-4 で定義されています。
 → CiA601-4は新規 ISO11898-2:2024のリリースに伴い規格が一本化され現在運用されています。

このページでは、CANを高速で通信させた際に発生するリンギングを改善し、高速で安定した通信が可能となる、NXPの信号改善機能(SIC)を搭載したCANトランシーバー製品について解説します。

CAN FDのトレードオフ(トポロジーとデータレート)

CANネットワークはコスト効率が高く、堅牢、スケーラブル、実装が容易で、車全体で複雑なトポロジーのサポートが可能です。
しかし、新機能が車に追加される中で、より多くのデータ交換が必要になり、CANネットワーキング・システムの限界を超えるようになりました。そのような状況下で生まれたCAN FD通信は、従来のCAN通信と比較し高帯域幅に対応できる技術で、データレートを500Kbpsから最大5Mbpsまでに上げることが可能となります。

バス型のネットワークトポロジー(配線の構造)を使用しているCAN FDは通信線に各ノード(ECU)を接続していくことによりネットワークを構成できるため、ネットワークがシンプルで、その設計が容易に行えるというメリットがあります。

・リニア方式
スタブ(枝分かれ)があるようなCANバス上において、高速通信を行うにはリニアトポロジー(ディジーチェーン)での接続を行う方法がありますがハーネスの増加によるコストや重量の増加が懸念されます。

・マルチスタブ方式
複数に枝分かれしたマルチスタブ接続では、ハーネスを少なくできますが、信号反射に起因するいわゆる「信号リンギング」の干渉を受けてCANバスの信号品質が低下します。

CANバス ネットワーク

次に信号リンギングのイメージ図を示します。

CAN FDでは1bit長が短いのでサンプルポイントまでの時間が減る事を意味しており、従来のCAN通信であれば問題にならなかったリンギング収束時間が問題になります。
この信号リンギングにより、CAN FD通信は実質的に、多くのネットワークで2Mbpsに制限されるとともに、よりリニアなトポロジーに利用が限定されます。

その結果として、ワイヤハーネスは長いケーブルを使ってのブランチ化を回避する必要が生まれ、車全体でハーネスの引き回しがさらに複雑になることから、コストと重量が増加してしまうという問題が生じます。

SIC技術の詳細

ここではNXPのSIC CANトランシーバーはどのように信号のリンギングを抑えているかについて解説します。

SICの信号品質改善機能には、送信側で改善(TX方式)するものと、受信側で改善(RX方式)するものがあり、NXPのトランシーバーは送信側で改善を行います。これは、送信側にはマイコンからのTXD信号という基準があるため、バス上を伝送されてきた信号(ノイズ等も含まれる)に対して信号処理を行うよりも優れているとの考えからです。古いCiA規格にはTX方式、RX方式の両方が記載されていましたが、最新版規格のISO11898-2:2024にはTX方式のみが記載されています。

TXD入力信号によるリセッシブエッジのアクティブな低インピーダンスドライブ

SICではドミナント-リセッシブエッジ後のインピーダンスをLowからHighへ一気に切り替えず中間インピーダンス領域(75-125Ω)を持たせています。また、TXDリセッシブから測定して最大530nSecとなります。

TJA1462 データシートより抜粋

このように、NXPのSIC技術はCAN信号をアクティブに改善することにより、リンギングに起因する信号の整合性の問題を解消します。

SIC 波形観測

NXPのCANトランシーバーが複数搭載されたシステムデモ基板を用いてSICの実際の効果を確認してみたいと思います。
今回は、TJA1043(SIC無し)とTJA1465A(SIC有りパーシャルネットワーキング)を使用して、それぞれが出力するバスのレセッシブ波形を観測しました。波形観測時の通信速度は2Mbpsです。

SICが無い場合にはバスラインにレセッシブ確定レベルの0.5Vを超える大きなリンギングが発生しています。

TJA1043(SIC無し)

次にTJA1043の出力を停止して、TJA1465Aが出力するバス波形を同様に観測しました。
SIC効果によってリンギングのレベルは0.5V以下に抑えられるのでドミナントに間違う可能性が無い事がわかります。

TJA1465A(SIC有り)

TJA146x 製品概要

NXPのSIC CANトランシーバー TJA146xの製品概要です。

  • CAN FD SIC製品は標準的な8ピン、14ピンのCANトランシーバーとピン互換でそのまま置換える事が可能です。
  • ISO11898-2:2016 と SAE J2284-x との互換性 (WUP filter twake = 0.5μs to 1.8μs)
  • ソフトウェアの変更を必要としません (TJA1043→TJA1463でSWドライバ互換)
  • AEC-Q100 Grade-0 対応品 (TJR146x)

まとめ

ここまで、NXPの車載ネットワーク製品である、信号改善機能(SIC)を搭載したCANトランシーバーについて解説しました。
NXPの車載ネットワーク製品は、幅広いラインナップでお客様の様々な要求に応える製品となっていますので、ご興味がありましたらネクスティ エレクトロニクスまでお問い合わせください。

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