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車載システムの電動化・複雑化に伴い、車両内でECU(Electronic Control Unit)間の通信を担う車載ネットワークには、高い信号品質、相互接続性、省電力性能、EMC性能が求められています。
NXPは、車載ネットワーキング技術において広く認知されている企業であり、特にCAN(Controller Area Network)および、LIN(Local Interconnect Network)物理層(PHY)トランシーバーにおいて幅広い製品ラインナップを提供しています。
このページでは、車載ネットワーク製品をお探しのECU開発メーカー様向けに、車載環境の厳しい条件に耐えることのできる、NXPの車載CAN/LINトランシーバー製品の特徴について解説します。
NXPの車載ネットワーク製品を支える開発・製造体制
NXPでは、CAN/LINトランシーバーは車載ネットワーク製品に分類されています。
ここではNXPの車載ネットワーク製品を支える開発・製造体制について紹介します。
NXPの車載ネットワーク製品は、「品質」「供給」「サポート」「製品群」「技術革新」を5つの柱として開発・製造がおこなわれています。

NXPの車載ネットワーク製品を特徴づける5つの柱
- 品質:ゼロ・ディフェクト(不良ゼロ)の精神で常に不良率の低減に向けた活動を行っています。
- 供給:マルチソース(複数の工場で生産)を進めています。 お客様のビジネスをBCPの観点からもサポートします。
- サポート:世界各地に技術サポート拠点を持つことで、迅速で柔軟なサポート対応を可能にしています。
- 製品群:幅広い製品ラインアップを持つことで、お客様のニーズに合った製品をお届けします。
- 技術革新:新たな技術・標準規格に素早く対応することで、市場ニーズに応える製品をタイムリーに投入します。
車載ネットワーク製品の品質
NXPは総合的な品質に対するコミットメントとして、不具合ゼロに向けた取り組みを継続し、求められる品質レベルの革新的な製品をタイムリーに市場に投入し、優れたカスタマーサポートを提供しています。
最終的な目標は、お客様の期待を超えることです。
総合的な品質は、品質本位の考え方と文化によって可能になります。これはNXPの重要な基盤に反映されています。
製品のマルチソース化によるメリット
NXPの車載ネットワーク製品は、マルチソース(複数の工場で生産)に対応しております。
製品のマルチソース化によるメリットは以下のとおりです。
- 柔軟な供給を可能にします。
- 信頼性の高い生産体制を確立できます。
- リードタイムの短縮が可能になります。
- 供給面の確約がしやすくなります。
- 災害時などのリスクが発生しても、供給管理がしやすくなります。
マルチソース化を進めることで、より多くの工場(前工程・後工程)での組み合わせが可能になり、多様な生産体制を確立し、安定供給やビジネスの継続性を向上させています。
NXPの車載CANトランシーバー
CAN (Controller Area Network)とは、自動車内に搭載された複数のECU(Electronic Control Unit)間の高速シリアルデータ通信に使われる、標準的な通信プロトコルです。
CAN製品の技術革新への取り組み
NXPは、車載ネットワーク技術の発展において重要な役割を果たしており、CAN規格の標準化活動にも積極的に参加しています。NXPはCANプロトコルであるISO 11898規格の策定にも関与し、CAN FDやCAN XLなどの新しい技術規格の開発にも貢献しています。
NXPのCAN製品における技術革新への取り組みとして、以下の3つのトピックをご紹介します。
- 最新のCAN通信プロトコルへの対応
- 異なる電圧ドメインのブリッジングへの対応
- セキュリティ機能への対応

NXPのCAN製品の技術革新
最新のCAN通信プロトコルへの対応
NXPのCAN PHY製品は最新のプロトコルに対応しています。
CANプロトコルの種類について紹介します。
- CAN (Controller Area Network)
CANは、車載ネットワークの標準的な通信プロトコルとして広く使用されています。車両内に複数あるエンジン制御、トランスミッション制御、ステアリングやブレーキなど、通信のリアルタイム性や信頼性が求められるシステムで使用されます。
- CAN FD (Flexible Data-rate)
CAN FDは、従来のCANよりも高速なデータ通信と大容量のデータ転送が可能です。これにより、車載インフォテインメントシステム、ADAS(高度運転支援システム)などのアプリケーションに適しています。
- CAN XL (Extra Long) - 対応製品開発中
CAN XLは、次世代の車載ネットワークプロトコルとして開発されており、CAN FDよりも高速なデータ通信と大容量のデータ転送が可能です。これにより、自動運転車や高度なADAS、車載ネットワーク全体の統合など、将来的な高性能車載システムに対応することができます。
- CANプロトコルの比較
プロトコル | CAN | CAN FD | CAN XL |
---|---|---|---|
データレート | 最大1 Mbps | 1~8 Mbps | 10~ Mbps |
フレームサイズ | 最大データ長8バイト | 最大データ長64バイト | 最大データ長2048バイト |
エラー検出 | CRCを使用 | 強化されたCRC | さらに強化されたCRC |
互換性 | ― | 従来のCANと 後方互換性がある | 従来のCAN FDと 後方互換性がある |
CRC: Cyclic Redundancy Check
異なる電圧ドメインのブリッジングへの対応
NXPのCAN PHY製品は異なる電圧ドメインのブリッジングに対応した絶縁CANトランシーバーをラインアップしています。
NXPのCAN EV(電気自動車)やハイブリッドカーなどには、高電圧と低電圧の両方のネットワークが混在します。NXPの絶縁CANトランシーバーは、グラウンドの絶対電位が異なるシステム間をガルバニック・アイソレーションにより電気的に絶縁することで、安全な通信を可能にします。CANトランシーバーにアイソレーターを統合することによって、高電圧と低電圧のレベルをつなぐセーフティ・ブリッジの設計は劇的に簡素化されます。
NXPの絶縁CANトランシーバーには、感電や過電圧、オフセット電流や電流の逆流防止機能が実装されると同時に、ノイズの多い環境での信号品質を大幅に向上します。
セキュリティ機能への対応
NXPのCAN NXPのCAN PHY製品はCAN通信にセキュリティ機能を付加する、セキュアCANトランシーバーをラインアップしています。
NXPのCAN EV(電気自動車)NXPのセキュアCANトランシーバーは暗号化を使用せずに、従来のCANおよびCAN FD通信をセキュアにする、スムーズでコスト効率の高いソリューションを提供します。セキュアCANトランシーバーに内蔵されたフィルタにより、ローカルのCAN通信をハードウェア・ベースで認証できます。さらに、帯域幅のオーバーヘッド、遅延、認証・暗号ソフトウェアによるプロセッサーの負荷なしで、ローカル・ホストからのフラッディング(DoS:サービス拒否)攻撃を防ぐ送信帯域制限機能が搭載されています。ローカル・ホストが割り当てられていないIDでCANメッセージを送信しようとする「改ざん」、ローカル・ホストのみに割り当てられているIDを含むCANメッセージを受信した「なりすまし」のセキュア・インシデントを検知し、アクティブ・エラー・フレームを送信することにより、メッセージを無効化します。
車載CANトランシーバーの種類
NXPのCANトランシーバーの省電力モードによる製品種別について解説します。
Basic CAN
- ベーシックにCANの送受信のみ行う製品です。
- 最も低コストで小型(8pin)
- VIO(MCU電圧が5V以外の時に使用するTXD, RXDのしきい値電圧調整用電源端子)はoptionとなります。
- TJA1057 高速CANトランシーバーMantisファミリ

TJA1057のブロック図
Standby Mode CAN
- スタンバイモードにより消費電力を抑えられます。
- STB端子でスタンバイモードを制御します。
- CAN wake-up機能が必要な場合に使われます。
- パッケージはBasicと同じく8pinです。
- VIO(MCU電圧が5V以外の時に使用するTXD, RXDのしきい値電圧調整用電源端子)はoptionとなります。
- TJA1044 高速CANトランシーバー、スタンバイ・モード搭載

TJA1044のブロック図
Sleep Mode CAN
- スリープモードでより高度な低消費電力システムを構築できます。CAN ICの低消費電力だけでは無く、ECU電源のON/OFF制御も可能(INH端子により)
- システム制御端子やバッテリ電源入力端子などが増える為、パッケージは14pinに拡張されています。
- TJA1043 High Speed CAN transceiver

TJA1043のブロック図
CANトランシーバーの推奨製品
NXPの車載ネットワーク製品におけるCANトランシーバーの推奨製品です。
表の右端の列にある「CAN SIC」は、Standby, Sleep Mode付CANトランシーバーに、SIC機能を追加した製品になります。SIC (Signal Improvement Capability) は、CANバス上の信号リンギングを抑制し、信号品質を改善することができます。CAN SICトランシーバーは通常のCANトランシーバーと置換えて使用することが可能です。

NXPのCANトランシーバーの推奨製品
もっと詳しく知りたい方は、NXP公式サイト CANトランシーバー にアクセスしてください。
NXPの車載LINトランシーバー
車載LIN(Local Interconnect Network)とは、自動車内に搭載されたECU間での低速シリアルデータ通信を実現するためのネットワークプロトコルです。LINは、主にコスト効率が求められるアプリケーションで使用され、CAN(Controller Area Network)よりも低速でシンプルな通信を提供します。
LIN製品のラインアップ
NXPのLIN製品のラインナップは、ベーシックなSingle ChannelのLINトランシーバーを基本として、Dual, Quadなどの複数チャネルに対応したMulti Channels LINトランシーバー、電源機能を追加したLIN SBC(System Basis Chip)というラインアップです。

NXP車載ネットワークLIN製品のラインアップ
- LINトランシーバーだけを使用する場合は、Single Channel LINトランシーバーをご検討ください。
- LINとシステムの小型化が必要な場合は、電源、リセット、ウォッチドッグなどの機能が追加されたLIN SBCをご検討ください。
- LINチャネルを複数使用する場合は、複数のLINトランシーバーを統合したMulti Channels LINトランシーバーをご検討ください。
Single Channel LINトランシーバー
NXPのLINトランシーバー製品の中で最もBasicなSingle Channel LINトランシーバーについて紹介します。
TJA1027 | Single Channel LINトランシーバーの中でも、基本機能のみのCore LINトランシーバー |
---|---|
TJA1029 | TJA1027にドミナント・タイムアウト機能を追加したBasic LINトランシーバー |
TJA1021 | TJA1029に外部の電源レギュレーターを制御できるINH端子とローカル・マイコンからのウェイクアップ機能を追加した、Standard LINトランシーバー |
MC33662(B) | TJA1021に、High-Speed LIN通信機能を追加したStandard LINトランシーバー |

NXPのSingle Channel LIN製品のキースペック比較
もっと詳しく知りたい方は、NXP公式サイト オートモーティブLINソリューション にアクセスしてください。
まとめ
ここまで、NXPの車載ネットワーク製品である、CAN/LINトランシーバーについて解説しました。
NXPの車載ネットワーク製品は、幅広いラインナップでお客様の様々な要求に応える製品となっていますので、ご興味がありましたらネクスティ エレクトロニクスまでお問い合わせください。
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ネクスティ エレクトロニクスが運営する部品情報サイト「e-NEXTY(イーネクスティ)」で、紹介した製品の部品情報をご覧いただけます。
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