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車載システムの進化に伴い、ECUには高性能化・安全性・セキュリティー・OTA対応が求められています。NXPのS32K3シリーズは、これらの要件を満たす次世代マイコンとして登場しました。従来のS32K1から大きく進化し、ゾーンコントローラやBMS、ゲートウェイなど幅広い用途に対応します。
このページでは、NXPのS32K3マイコンについて詳しく解説していきます。
NXP車載マイコン S32K3シリーズ
まずは、S32K3シリーズの核となるハードウェアの魅力に迫ります。高性能プロセッサーと豊富なメモリー、安全性を支える堅牢な設計が次世代車載制御を可能にします。これらの強みをさらに具体的に示すため、S32K3シリーズが備える主要な特長をご紹介します。
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高性能化
Arm Cortex-M7コアを最大5コア搭載し、動作周波数は120~320MHzに対応。これにより、複雑な制御や高速通信処理が可能になります。さらに、メモリー容量も512KB~12MBに大幅に拡張され、ソフトウェアの大規模化に対応します。 -
セキュリティ
ハードウェアセキュリティエンジン(HSE-B)を搭載し、暗号処理や鍵管理をハードウェアで実現します。ISO 21434準拠の設計により、車載サイバーセキュリティに対応します。
また、HSE向けのファームウェアや暗号化ドライバーなどのソフトウェアは、NXPからワンストップで提供されます。さらに、これらのソフトウェアは追加費用なしでご利用いただけるというメリットがあります。 -
OTA対応
RWW(Read-While-Write)、A/Bスワップ、ロールバック機能を備え、アップデート中でもシステムを停止させることなく安全に更新できます。 -
機能安全対応
ISO 26262 ASIL-BからASIL-Dに対応しており、車載システムの機能安全を確保します。ISO 26262は、自動車の電気・電子システムにおける機能安全の国際規格であり、ASIL(Automotive Safety Integrity Level)はその中で安全性の重要度を示す指標です。 -
パッケージ
HDQFP、LQFP、BGAなど多様なパッケージを用意し、設計の自由度を高めています。
HDQFPパッケージは、端子は外向きと内向きが互い違いに配置されており、従来のQFPよりも高密度実装が可能です。これにより、スペース効率を向上させます。
HDQFPパッケージ
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長期供給保証
最低15年の供給保証を提供しており、長期的なプロジェクトでも安心してご利用いただけます。
S32K1とS32K3の比較
以下はS32K1とS32K3の比較表です。
S32K3の追加により、今後はさらに幅広いアプリケーションをカバーできるようになりました。
| 項目 | S32K1 | S32K3 |
|---|---|---|
| コア | Cortex‑M0+ / M4F | Cortex‑M7(最大5コア) |
| 周波数 | 最大112MHz | 最大320MHz |
| メモリー | 最大2MB | 最大12MB |
| セキュリティ | CSEC | HSE‑B |
| OTA | RWW | RWW・A/Bスワップ |
| 安全性 | ASIL B | ASIL B~D |
開発環境・ソフトウェアサポート
S32K3シリーズの魅力はハードウェアだけではありません。ここでは、開発をスムーズに進めるための強力なソフトウェアサポートとツールについて解説します。
リアルタイム・ドライバ(RTD)
・ S32 Design Studio IDE
S32K3シリーズは、NXPが提供する統合開発環境「S32 Design Studio」に対応しています。このIDEは、直感的なGUIと豊富な機能を備えており、ソフトウェア開発効率を向上させます。デバッグ機能も充実しており、迅速なプロジェクト進行が可能です。さらに、S32 Design Studioは無償で提供されるため、開発を開始する際の初期投資を抑えることができます。豊富なライブラリとサンプルコードも提供されており、簡単に利用を開始できます。
・ リアルタイム・ドライバ(RTD)
リアルタイム・ドライバ(RTD)は、AUTOSARアプリケーション用のMCAL環境と非AUTOSAR用のソフトウェア開発キット(SDK)を統合したソフトウェア製品です。AUTOSAR(Automotive Open
System Architecture)は、自動車ソフトウェアの標準化を目的としたフレームワークで、多くの自動車メーカーやサプライヤーに採用されています。
MCAL(Microcontroller Abstraction
Layer)は、ハードウェアと上位ソフトウェア層の間を仲介する層で、マイコンの特性を抽象化したソフトウェアです。MCALが必要な理由は、異なるハードウェアプラットフォーム間でのソフトウェアの移植性を向上させ、開発効率を高めるためです。これにより、開発者はハードウェアに依存せずに機能を実装できます。
S32K3を含むS32製品を購入されたお客様は、このRTDを追加ライセンス・コストなしで利用できます。
以下に、RTDの特徴をまとめました。
- SDK環境とMCAL環境を1つのソフトウェア製品に組み合わせ、新しい機能を追加し、既存の機能をアップデート
- Automotive-SPICE、ISO 26262、ISO 9001、IATF 16949に準拠
- RTDソフトウェアは、MCALの量産適用も含め、追加のライセンス費用なしで使用可能
- EB tresos Studio (AUTOSAR) およびS32CT(非AUTOSAR)コンフィギュレータをサポート
- ベアメタル、AUTOSAR OS、FreeRTOSアプリケーションをサポート
- GCC、IAR、DIABおよびGreen Hills GHSコンパイラをサポート
S32K3シリーズ・ラインナップ
次は、S32K3シリーズの製品群にフォーカスします。幅広いラインナップが、車載開発の可能性を広げます。
以下の図はS32K3シリーズのラインナップを表しています。お使いのアプリケーションに最適なS32K3マイコンを選定する際は、まずこのラインナップ表を御覧ください。
S32K3シリーズ・ラインナップ1
SS32K3シリーズ・ラインナップ2
SS32K3シリーズ・ラインナップ3
SS32K3シリーズ・ラインナップ4
詳細なテキスト、仕様比較表、データシートなどの情報が必要な方は、セレクターガイドもご用意しておりますので、ぜひご活用ください。
製品セレクタ
S32K3の評価ボード
S32K3シリーズの開発をよりスムーズに進めるためには、評価ボードの活用が欠かせません。
ここでは代表的な汎用ボードを紹介します。詳細はNXP公式サイトもご参照ください。
S32K3汎用評価ボード
S32K3汎用評価ボードは、基板上にCANおよびLINピン、評価用のプッシュスイッチ、動作確認用のLEDなどが実装されています。電源はUSBまたはACアダプターから供給可能です。
| 評価ボード | イメージ |
|---|---|
| S32K31XEVB‑Q100 車載向け汎用評価ボード この評価ボードには、S32K311 HDQFP100ピンマイコンが搭載されています。 S32K31XEVB-Q100汎用評価ボードのスタート・ガイド |
|
| S32K312EVB-Q172 車載向け汎用評価ボード この評価ボードには、S32K312 HDQFP172ピンマイコンが搭載されています。 S32K312EVB MCUのクイック・スタート・ガイド |
|
| S32K312MINI-EVB 車載向け汎用評価ボード この評価ボードには、S32K312 HDQFP172ピンマイコンが搭載されています。 S32K312MINI-EVB汎用評価ボードのスタート・ガイド |
|
| S32K3X4EVB-T172 車載汎用評価ボード この評価ボードには、S32K344 HDQFP172ピンマイコンが搭載されています。 車載用MCUボードのクイック・スタート |
|
| S32K344-WB:車載汎用評価ボード この評価ボードには、S32K344 BGA257ピンマイコンが搭載されています。 S32K344 EVBクイック・スタート・ガイド |
|
| S32K3X8EVB-Q289汎用車載用途向け評価ボード この評価ボードには、S32K358 BGA289ピンマイコンが搭載されています。 S32K3X8EVBボードのクイック・スタート・ガイド |
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まとめ
S32K3シリーズは、性能・セキュリティ・OTA対応を兼ね備えた車載マイコンです。ここまで、その魅力を詳しくご紹介しました。
S32K3シリーズは、ゾーンコントローラ、バッテリーマネジメントシステム(BMS)、ゲートウェイ、ボディ制御など幅広い車載アプリケーションに対応可能な製品となっておりますので、ご興味をお持ちの方は、ネクスティ
エレクトロニクスまでお気軽にお問い合わせください。
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