電源ICの基礎知識や種類、使用するメリットについて解説します。電気製品の動作に欠かせない電力供給の役割を理解し、電源ICの重要性を知ることで、より効果的な電力管理が可能になります。
私たちの身の回りにある電気製品を動かすには、電力の供給が必要です。その供給に使われているのが『電源IC』です。しかし、電力供給以外の観点から電源ICについて知っていることは、あまりないかもしれません。そこで、本記事では電源ICとはどのようなものであるか、基礎知識から使用するメリット、さらに種類について紹介します。 この記事を読むことで、電源ICの重要性を理解していただけることでしょう。
電源ICの基礎知識
電源ICとは、その名の通り、電気製品が動作したり機能したりするために必要な電力を供給するための装置です。家庭用の電化製品を思い浮かべると理解しやすいかもしれません。どんな機器でも、電源コードをコンセントに差し込んで使用しているはずです。この電源コードは、いわゆるACコードと呼ばれ、その内部には100Vの交流電源を取り込んでおり、機器が動作するのに必要な電力に変換しています。 このように、機器には複数の電気回路や電子回路が搭載されています。それぞれの回路が安定して動作し、目的の機能を果たすためには、個々の回路に必要な電力量を送り込む必要があります。回路によって必要な電力が異なるため、それぞれの回路に合わせた電圧に変換しなければなりません。その電圧変換を担っているのが電源ICです。 では、電源ICはどのような場面で使われることが多いのでしょうか。

電源ICは何に使われているのか
おそらく、多くの方は日常生活で使っている機器に対してのイメージのほうが強いかもしれません。たとえば、パソコンやスマートフォン、タブレット、家庭用ゲーム機、TVや洗濯機などの家庭用電化製品……身の回りを見渡してみても、いくつもの機器が思い浮かんでいることでしょう。もちろん、それらに使われているACコードにも電源ICは搭載されています。 さらに、カーナビやバックモニターカメラ、オーディオ、エンジンなど、車載されている機器や部品でも電源ICは利用されています。もっと広い視野で見ると、オフィスで活用されている複合機や、病院での検査に使用されるエコーやレントゲン機材、飲食店や小売業の店舗に置かれているPOS端末などもあります。産業分野でも電源ICは欠かせない存在です。たとえば、自動車生産工場をはじめとした製造工場で使用される産業用ロボットや工作機器にも、電力供給のために電源ICが利用されています。 これらのことからわかるのは、電源ICは電力を必要とする機器において、なくてはならない存在であるということです。

電源ICを使わないとどうなる?
電源ICを使わない場合、自分で電源回路を設計して、必要な部品を組み立てることになります。つまり、電源ICが提供するはずの機能をゼロから自作することになるわけです。これらの作業には時間と労力がかかるうえ、部品選定の際には適切な材料を選ぶための知識も必要です。したがって、電子工学の知識が求められます。もし作成に失敗すれば、思うように電力が供給されなかったり、電力過多で機器にダメージを与えたりする可能性もあります。 電源ICを使用すれば、こうした問題が解消され、安定した電力供給が可能になります。
電源ICを使うことのデメリットとメリット
どんなものにも一長一短の両面がありますが、これは電源ICにも当てはまります。適切に取捨選択するためには、どのようなデメリットがあり、それを上回るメリットにどのようなものがあるのかを把握しておくことが大切です。
どんなデメリットがあるのか
電源ICを使うことのデメリットは、大きく3つあります。「コスト」「カスタマイズの制限」「故障の影響」です。
1.コスト
大量に電子機器を製造するようなケースでは、自分で電源回路を作るよりも高価になってしまうことがあります。
2.カスタマイズの制限
電源ICは予め設定された機能しかないため、特殊な要件がある場合に対応が難しくなることがあります。
3.故障の影響
電源ICは予め設定された機能しか持たないため、特殊な要件がある場合に対応が難しくなることがあります。

どんなメリットがあるのか
電源ICを使用することのメリットは、「電源回路を簡単に作れるようになること」「電圧変換や電流制御を容易にできるようになること」「安定した電力供給を可能にすること」などが挙げられます。さらに、以下のポイントもメリットとして考えられます。
実装面積の省スペース化
電源ICを使わずに同様の機能を持たせようと自作する場合、さまざまな部材を組み合わせて回路を作ることになるため、電源ICを使った場合と比べて実装面積が大きくなりやすいです。しかし、電源ICは、これ一つで求める働きを担ってくれるうえ、そのサイズも小さいものです。電子機器を小さく設計したいというときには、スペースを可能な限り省く必要がありますから、そういった場合において電源ICはそのサイズ感から省スペースでの設計を可能にしてくれます。
効率性アップ
電源ICは電力を効率的に使えるように設計されているため、無駄な電力消費を避けることができます。これにより、機器内部での荷電による負荷を軽減し、電池などの寿命を延ばすのにも役立ちます。
電源ICを使うことのメリットは、総じて電子機器の動作において、効率性と安定性を上げ、なおかつ小さく設計できることです。これは、電子機器を作る側にとって大きなメリットとなるでしょう。
電源ICの種類
電源ICは、機能によっていくつかの種類に分けられています。大きくは2つに分類され、用途を限定しない汎用的に使うことが可能な「汎用向け」と、特定の用途だけを対象にした「特定用途向け」に分かれます。さらに、これらのカテゴリーから細かく種類が分かれます。
汎用向けの種類
汎用向けの電源ICには、「リニアレギュレータ」「DC/DCコンバータ」「AC/DCコンバータ」「リセットIC」「スイッチIC」などがあります。
リニアレギュレータ、DC/DCコンバータ、AC/DCコンバータは、一定の電圧供給を目的とした電源ICです。
リセットICは電源の監視を目的としており、電源が正常に供給されているかを確認します。
スイッチICは、電源のON/OFFを制御するためのものです。
これらの汎用向け電源ICは、複数の機能を搭載しない代わりに、用途が限定されないという長所があります。

特定用途向けの種類
一方、特定用途向けの電源ICには、「Li-ion二次電池保護IC」「Li-ion二次電池充電制御IC」「LED照明用電源IC」「複合電源IC」などがあります。これらは、汎用向けとは異なり、複数の機能を1つにまとめたものになっています。
Li-ion二次電池保護ICは、スマートフォンなどで使用されるリチウムイオン電池を安全かつ効率的に使うための電源ICで、過充電や過放電、過電流、温度からの保護機能を備えています。
LED照明用電源ICは、LEDの働きを制御するためのもので、LEDのON/OFFの切り替えや一定の明るさの保持、明るさの調整などの機能があります。
複合電源ICは、電子機器が必要とする複数の電源の管理や制御を行うためのもので、過電流や過電圧、温度監視などの保護機能も持っています。これにより、電子機器の電源管理を効率的に行う役割を担います。
このように、電源ICは用途や目的によって最適なものが異なります。どのような用途で、どういった機能を求めるのかによって選択肢が変わってくるのです。
まとめ
電源ICは、電子機器を安定的かつ効率的に動かすためには欠かせないものです。デメリットはあるものの、メリットのほうが大きいため、よほどの場合を除いては使うことが得策です。
しかし、用途に合わないものを選べば、電子機器の故障や損傷の原因にもなりかねません。どういったものを選ぶべきかは、用途と目的、求める機能を明らかにしてから判断するのが望ましいでしょう。とはいえ、適切なものを選び出すことが難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのような場合は、ネクスティ
エレクトロニクスにぜひお問い合わせください。お客様に合った電源IC選びをお手伝いいたします。
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