オペアンプの発振とは?
オペアンプは出力を入力にフィードバックする負帰還を利用して、増幅やフィルターなどの機能を実現しています。
このフィードバック経路に、出力信号に持続的に振動する信号が発生します。
この状態を「発振」と呼びます。
負帰還のブロック図と基本動作
下図はオペアンプの負帰還を示したブロック図です。
Aoをオペアンプとすると、Aoがβよりも十分大きい周波数帯域では、出力VOは入力VIを1/β倍した値に近似できます。

発振の条件:一巡伝達関数とゲイン・位相の関係
Ao×βは「一巡伝達関数」と呼ばれます。
一巡伝達関数Ao×βの位相遅れが180°になる周波数Fttでゲインが1倍以上あるとき発振します。
たとえば位相遅れが180°になる周波数Fttで一巡伝達関数のゲインが2倍であった場合を考えます。
VIの値をステップ状に変更した結果、周波数FttにおけるErrの値が0.1V@Fttになったとします。
フィードバック回路を一巡してフィードバックされる値は0.2V@Fttになります。
このフィードバックされた値は元の0.1V@Fttより大きくなっており、フィードバック回路を通るたびに元の値より大きな値になり値が収束することはありません。
実際にはオペアンプが出力できる値には電源電圧などにより制限があるため、限界値に達するとAo×βは1倍以下になりオペアンプの出力は低下します。
しかし、オペアンプの出力が低下したことによりAo×βが再度1倍以上になります。
この現象が繰り返されることで持続的な振動=発振が起こります。
発振の安定度を示す指標「位相余裕」
発振する条件として、「一巡伝達関数Ao×βの位相遅れが180°になる周波数Fttでゲインが1倍以上」を説明しましたが、発振に至りにくい安定度を示す指標「位相余裕」を紹介します。
位相余裕は一巡伝達関数のゲインが1倍(0dB)の時の-180°との位相差を指します。
システムの特性に影響を与えるさまざまな要因のばらつきや変動により位相余裕がどの程度あれば安定と言えるかは変わってきますが、一般には45°以上あると安定とされています。
オペアンプ非反転増幅器の位相余裕の例
下図は、オペアンプの非反転増幅器一巡伝達関数の例です。
実線と破線の特性比較
- 実線の特性:位相余裕 53°
- 破線の特性:位相余裕 0°

静電容量と出力抵抗がもたらす発振の原因

実線の特性は位相余裕が45°以上あるため安定な特性と言えますが、破線の特性はオペアンプの出力に接続された静電容量CLと出力抵抗ROにより、位相遅れが増加して位相余裕が0°になり発振に至ります。
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