このコラムでは、電気・電子機器に必要不可欠な電子回路基板を製造する上で必要な要素技術である"基板実装"について解説いたします。
そもそも基板実装とは?といった、初級者の方にも身近に感じてもらえるような情報の提供をお届けします。
Vol.2
表面実装(SMT)とは?~基板実装基礎知識~
前回の記事では、基板実装の工法や主な工程の流れについてご紹介しました。
今回のコラムでは”表面実装(SMT)”についてもう少し細かくご紹介します。
表面実装工程フロー(おさらい)
表面実装(SMT・・・Surface Mount Technologyの略)
基板のパッドに部品を載せ、リフロー炉ではんだペーストを溶融させて一括接合する方式となります。
代表的な工程フロー
①はんだペースト印刷(Solder paste printing)
ステンシル(メタルマスク)とスキージを使い基板のパッドにはんだペーストを塗布します。
②はんだペースト検査(SPI: Solder Paste Inspection)
はんだ印刷量や位置を自動検査します。
③部品搭載(Pick-and-place)
自動機でチップ部品やICなどを基板上の所定の位置に載せます。
④リフローはんだ付け(Reflow soldering)
リフロー炉で加熱し、はんだペーストを溶かして部品と基板を接合します。
⑤冷却(Cooling)
はんだが固まるまで冷やします。
⑥外観検査(AOI: Automated Optical Inspection)/X線検査(X‑ray)
AOIでブリッジ・オープン・位置ずれを検出し、BGA/QFNなど外観で見えない接合にはX線でボイド・未接合を評価します。
それでは次ページより各工程についてもう少し細かく触れていきます。
①はんだペースト印刷
はんだペースト印刷(Solder paste printing)
電子部品を基板にはんだ付けするために、プリント基板上のパッド(電極)にはんだペーストを正確に塗布する工程となります。
○使用装置
はんだ印刷機と、基板のパッド部分の開口部を持つメタルマスク(版)を使用します。
○使用材料
基板
はんだペースト
※粉末状のはんだ合金とフラックス(酸化膜を除去し濡れを促す)などを混合したもの
○ステップ:
①位置合わせ:
プリント基板とメタルマスクの開口部が正確に一致するように位置を合わせます。
※基板とメタルマスクのアライメントマークを画像認識し、位置合わせをおこないます。
②塗布:
はんだペーストをマスクの上に供給し、スキージと呼ばれるブレードで一定の圧力と速度で移動させます。
③充填と転写:
スキージが移動する際、はんだペーストにローリング(転がり)が生じ、内圧が高まることでマスクの開口部にペーストが充填されます。
④版離れ:
最後に、マスクを基板から離すと、開口部に充填されたはんだペーストが基板のパッドに転写され、印刷が完了します。
②はんだペースト検査
はんだペースト検査(SPI: Solder Paste Inspection)
はんだペースト印刷後の基板を、カメラ・レーザー等で測定するSPI装置を使用してはんだの「面積」「体積」「位置」を数値で測定し、合否判定を行うことではんだ印刷の品質を検査します。
※機種によっては、はんだ印刷機へ製造条件等の自動フィードバック制御に対応するものもあります。
○使用装置
SPI(Solder Paste Inspection)装置
○使用材料
はんだペースト印刷済みの基板
○ステップ:
①位置合わせ:
基板の基準マーク(Fiducial)をカメラで読み取り、基板位置を自動補正します。
※X座標,Y座標,Θ
②撮像・測定:
高解像度カメラやレーザーを使用し、測定を行い結果から「面積」「体積」「位置」を自動算出します。
③判定処理:
設定した閾値と比較し、合否判定を行います。
③部品搭載
部品搭載(Pick-and-place)
部品をノズルで吸着して移載し、基板の所定の位置に搭載する工程です。
※特殊な部品では特注ノズルやチャックにより掴んで移載する場合もあります。
○使用装置
表面実装機(Mounter)
部品(納品形態、大きさ、形状、要求される搭載精度など)に応じて装置を選定し組み合わせます。
○使用材料
はんだペースト印刷済みの基板、各種電子部品
○ステップ:
①位置合わせ:
基板の基準マーク(Fiducial)をカメラで読み取り、基板位置を自動補正します。
②部品吸着:
部品供給装置から供給された部品をノズルで吸着します。
③補正:
専用の部品認識用カメラで測定し検査、位置の補正を行います。
※1点1点の形状、品種、極性などの検査、座標や傾きの補正を行っています。
④搭載:
搭載プログラムで指定された箇所に部品を自動搭載します。
※搭載時には部品の吸着モレの監視や押しつけの圧力制御をし繊細な部品の品質を保っています。
④リフローはんだ付け/⑤冷却
リフローはんだ付け(Reflow soldering)/冷却(Cooling)
リフローは、はんだを溶かして固める熱処理をし、基板と電子部品を接続する工程となります。
○使用装置
リフロー炉(Reflow Oven)
搬送コンベアと複数ゾーンに分かれた加熱炉を有し、基板を均一に加熱することができる装置。
※品質向上の為に、窒素(N₂)対応タイプが主流となっています。
○使用材料
部品搭載済みの基板
○ステップ:
リフローは「温度プロファイル」と呼ばれる熱処理の流れで管理されます。
①昇温:
基板全体をゆっくりと温めます。温度上昇速度は一般的に3℃/秒maxで基板と部品を均一に加熱しつつ、フラックスの活性化準備を行っています。
急激な温度変化による部品ダメージやクラック防止の側面もあります。
②プリヒート:
温度を一定に保ち、基板・部品・はんだペーストの温度差を小さくします。
フラックスを活性化させ、はんだ溶融の準備を行います。
基板全体の温度を揃え、熱ムラの防止も図ります。
③本加熱:
はんだの溶ける温度帯まで昇温し、はんだ付けを行います。
溶けたはんだが、基板のパッドと部品端子へ濡れ広がり接続が形成されます。
この際に、表面張力で位置が整います。(セルフアライメント)
④冷却:溶けたはんだを冷やして固めます。
冷却速度は一般的に6℃/秒maxで、遅すぎると結晶が粗大化し、接続強度低下につながります。
上記は、一般的な鉛フローはんだにおける典型的なプロファイルとなります。
実際の基板に使用する材料(はんだ、部品・基板等)の特性に合わせて最適化してください。
⑥外観検査
外観検査(AOI: Automated Optical Inspection)
高解像度カメラと照明を用いて基板表面を撮像し、画像処理にて基板の外観を自動で検査します。
○使用装置
AOI装置(2D/3D AOI)
2Dタイプが主流であるが、3D測定が可能な装置もあり、部品高さ・フィレット形状・リード浮きなどより細かな判定が可能な機種もあります。
○使用材料
部品搭載済みの基板
○ステップ:
①位置合わせ:
基板の基準マーク(Fiducial)をカメラで読み取り、基板位置の自動補正をします。
②撮像・測定:
撮像用カメラで撮影し、画像から実装部品の状態・形状を読み取ります。
③判定処理
設定した閾値と比較し、合否判定を行います。
※リフロー後の検査の場合が多いが、リフロー前にもブロック保証として実施するケースもあります。
X線検査(X‑ray Inspection)
表面から電極、接続部が見えない箇所をX線による内部透過画像にて検査を行います。
○使用装置
X線検査装置(2D/3D X-ray)
2Dタイプが主流であるが、3D測定が可能な装置もあり、内部を立体的に可視化(CT)することでより細かな判定が可能な機種もあります。
○使用材料
リフロー済みの基板
○ステップ:
①基板セット:
X線装置のステージ上に、基板を配置する。
②撮像・測定:
X線を発生させ、基板の透過した画像を取得します。
③判定:
目視による合否判定ないし、画像処理の上で設定した閾値と比較し、合否判定を行います。
表面実装工程での課題
ここまでに、各工程の流れを説明いたしましたがそれぞれの課題などを簡単にご紹介いたします。
①はんだペースト印刷(Solder paste printing)
重要性
印刷の状態は、はんだ付け品質を大きく左右します。
印刷状態(面積・体積・位置)が正しくないと様々な不良の要因となります。
主な課題
はんだ印刷再現性の向上(不足・過多・にじみ・ズレなどのバラつきを減らす)
メタルマスク設計(厚み・開口形状・アスペクト比)による安定性向上
はんだペーストの管理(温度・粘度・経時変化など)
課題への対応
印刷条件の最適化:スキージ圧・速度、版離れ速度、サポートピン位置などの最適化
材料管理:ペーストの保管管理、室温戻し・攪拌の標準化、使用期限管理
マスク最適化:厚みの適正化、ホームベース/逆テーパ等の開口形状の改善、化学処理追加等
メタルマスクの清掃:清掃サイクルとルールの最適化
②はんだペースト検査(SPI: Solder Paste Inspection)
重要性
印刷結果を数値(面積・体積・位置)で管理し、補正して不良の後工程流出を防止します。
主な課題
閾値の設定(厳しすぎによる生産数減少/ゆるすぎによる後工程の歩留まり低下)
印刷機へのフィードバック運用の徹底
課題への対応
データ分析による適切な閾値の設定(リフロー後の不具合との相関確認も行うとよい)
異常時のフィードバックルールを標準化(版清掃/スキージ交換/印刷条件変更等)
自動/半自動フィードバックの導入による位置補正・スキージ圧・速度、清掃周期の即時変更
③部品搭載(Pick-and-place)
重要性
正しい姿勢・位置で部品を搭載できるかが品質面で重要となります。
※リフロー時のセルフアライメント力を正しく作用させる為
主な課題
取り損じ/吸着不良(ノズル摩耗・汚れ、フィーダ送り)
位置/回転精度(基板補正・部品認識の不安定)/部品破損
異品種の誤実装や逆実装
課題への対応
保全の標準化管理:ノズル洗浄/交換周期、フィーダメンテナンス、ビジョン校正(定期)
プログラム標準化:XYθ補正、吸着高さ・押圧条件の適切な設定
供給部品のバーコード認証など照合システムの活用や画像認識機能の活用
④リフローはんだ付け(Reflow soldering)/⑤冷却(Cooling)
重要性
温度プロファイルどおり加熱し、はんだ溶融をさせて基板と部品を接続します。
実装品質を決定づける最終接合工程となります。
主な課題
プロファイル最適化(昇温・プリヒート・本加熱・冷却)
耐熱不足による部品破損
雰囲気管理(N₂濃度、炉内清浄度)
はんだ付け不良対策(ボイド/ぬれ不良/ブリッジ/ツームストーン等)
課題への対応
実測によるプロファイル検証・設定
部品耐熱仕様への適合確認(実測・マージンの確認)
N₂管理の標準化(濃度基準化、炉内清掃など)
メタルマスク設計/印刷機へのフィードバックによる不良対策
⑥外観検査(AOI: Automated Optical Inspection)/ X線検査(X‑ray Inspection)
重要性
リフロー後の全数外観品質(欠品・極性・位置・フィレットなど)を検査し不良流出を防ぎます。
X線検査では、AOIでは見れないBGA/QFNなど外観で見えない下面接合部の不具合を検出します。
主な課題
閾値の設定(厳しすぎによる生産数減少/ゆるすぎによる後工程の歩留まり低下)
不良品発生時の前工程へのフィードバック
課題への対応
撮像条件の改善(カメラ設定の調整や場合によっては3Dカメラやレーザー機能を使用する)
検出条件の見直し(認識パラメーターやロジックを見直すことで誤判定を改善する)
不良品の解析体制を構築し、早期の前工程へのフィードバックによる改善・対策
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