本コラムでは、既に多くの人・場所で利用されている、Wi-Fiの技術的な仕組みについて解説します。
今回は、Wi-Fiの技術的な仕組みにフォーカスして、
Wi-Fiの規格と周波数
無線伝送方式:『OFDM、OFDMA』、『SISO、MIMO』
暗号化方式:『TKIP、AES』
を解説します。
Wi-Fiの規格と周波数
規格と周波数
Wi-Fiの規格と周波数について、主要な情報を表に示します。
| IEEE | 802.11b | 802.11a | 802.11g | 802.11n | 802.11ac | 802.11ax | 802.11be |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Wi-Fi Alliance | ー | ー | ー | Wi-Fi4 | Wi-Fi5 | Wi-Fi6/6E | Wi-Fi7 |
| 周波数帯 | 2.4GHz帯 | 5GHz帯 | 2.4GHz帯 | 2.4GHz 5GHz | 5GHz帯 | 2.4GHz 5GHz 6GHz | 2.4GHz 5GHz 6GHz |
| Throughput | 11Mbps | 54Mbps | 54Mbps | 600Mbps | 3.5Gbps | 9.6Gbps | 46Gbps |
| 変調方式 | DSSS-CCK | OFDM | DSSS-CCK OFDM | DSSS-CCK OFDM | OFDM | OFDM OFDMA | OFDM OFDMA |
| MIMO | None | None | None | Support | Support | Support | Support |
| Year | 1999年 | 1999年 | 2003年 | 2009年 | 2014年 | 2021年 | 2024年(Plan) |
無線伝送方式
OFDM、OFDMA
Wi-Fi無線伝送方式における。OFDMとOFDMAの主な特徴について解説します。
OFDM
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing ⁄ 直交周波数分割多重)とは、802.11aの規格で使用されていた変調方式です。
OFDMの特徴
- データを複数のサブキャリアに分割して並列伝送
- チャネル全体の使用率を高め、無線伝送速度を向上させる。
- 1つのチャネル内のサブキャリアを同時に使用
OFDMA
OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access ⁄ 直交周波数分割多元接続)とは、Wi-Fi6(802.11ax)で新たに導入された変調方式の技術です。
OFDMAの特徴
- OFDMを改良し、チャネルをさらに小さなサブチャネルに分割
- 約2MHzを最小単位(リソースユニット:RU)として分割
- 異なる周波数を利用して複数のユーザーが同時に通信可能
OFDMAの主な利点
| 同時通信の実現 |
20MHzの帯域幅で最大9ユーザーが同時通信可能。
160MHzの帯域幅では最大74ユーザーでの同時通信が可能。
|
|---|---|
| 効率的な通信 |
パケットを効率的に送信し、遅延を軽減します。
トラフィックを最適化し、高密度ネットワーク環境でも効率的な通信が可能。
|
| 混雑の緩和 |
多数のデバイスが同時接続する環境でも、通信の混雑や遅延を軽減します。
|
| 柔軟な帯域幅割り当て |
異なるサイズのリソースユニット(RU)を使用して、柔軟に帯域幅を割り当てることができます。
|
OFDMAの採用により、Wi-Fi 6は複数デバイスの同時接続に強く、IoTデバイスの増加や高密度な通信環境にも対応できるようになりました。
これにより、オフィスや公共施設など、多くのデバイスが集中する場所でも安定した通信を実現します。
SISO、MIMO
Wi-Fi無線伝送方式における、SISOとMIMOの主な特徴について解説します。
SISO
SISO(Single Input Single Output)とは、最も基本的な無線通信方式です。
SISOの特徴
- 送信側と受信側でそれぞれ1本のアンテナを使用
- シンプルな構成で低コスト
- データ伝送速度は比較的遅い
- 電波の干渉や遮蔽の影響を受けやすい
MIMO
MIMO(Multiple Input Multiple Output)とは、複数のアンテナを使用する高度な通信方式です。
MIMOの特徴
- 送信側と受信側で複数のアンテナを使用
- データのスループットやリンク距離を大幅に改善
- 周波数帯域の利用効率が高い
- フェージング(電波の減衰)を低減し、リンクの信頼性を向上
MIMO(Multiple Input Multiple Output)は、Wi-Fi4(IEEE 802.11n)以降のWi-Fi規格で採用されており、最新のWi-Fi7(IEEE 802.11be)では16 × 16 MU-MIMO(Multi-User Multiple Input Multiple Output)をサポートしています。
性能比較
| 特性 | SISO | MIMO |
|---|---|---|
| アンテナ数 | 1 × 1 | 2 × 2以上 |
| データ伝送速度 | 低い | 高い |
| 電波干渉への耐性 | 弱い | 強い |
| システム複雑性 | 低い | 高い |
| コスト | 低い | 高い |
暗号化方式
TKIP、AES
Wi-Fi暗号化方式における、TKIPとAESの主な特徴について解説します。
TKIP:
TKIP(Temporal Key Integrity Protocol)とは、古い暗号化方式であるWEP(Wired Equivalent Privacy)を改良して作られました。
TKIPの特徴
- WEPよりも高い暗号強度
- 各パケットごとに異なる暗号キーを使用し、セキュリティを向上
- WEPの基本的な仕組みを引き継いでいるため、完全に安全とは言えない
AES:
AES(Advanced Encryption Standard)とは、現在のWi-Fi通信で、最も高い暗号強度を持つ暗号化方式です。
AESの特徴
- TKIPをさらに改良し、より堅固なセキュリティを提供
- 128ビットの鍵長を使用し、非常に強力な暗号化を実現
- 現代の無線通信では、最も推奨される暗号化方式
TKIPとAESの比較
| 特徴 | TKIP | AES |
|---|---|---|
| 暗号強度 | 中 | 高 |
| 安全性 | WEPより改善 | 最も安全 |
| 使用推奨 | 非推奨 | 推奨 |
セキュリティを重視する場合、AES暗号化を使用することが強く推奨されます。
多くの最新のWi-Fi機器は、AESをサポートしているため、より安全な無線通信環境を構築することができます。
まとめ
今回は、Wi-Fiの技術的な仕組みで、
Wi-Fiの規格と周波数、
無線伝送方式として『SISO、MIMO』、『OFDM、OFDMA』、
暗号化方式として『TKIP、AES』に、
焦点を当てて説明しました。
次回は『Wi-Fiのネットワーク構成』と題し、Wi-Fiのネットワーク構成について詳しく解説する予定です。
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