LEDおよび半導体レーザーといったデバイスから光を発した際、その光を検知して信号に変換する光センサーが欠かせません。一言に光センサーと言っても多数の種類がありますので、選定の際には悩まれることもあるかと思います。本コラムでは光センサーについて基本的な種類や用途について解説します。光センサー選びの迷いをスッキリ解消し、部品選定にぜひご活用ください。
光センサーとは?
光センサーは、光を電気信号に変換する電子部品です。
可視光、赤外線、紫外線など外部からの光を検知し、その強度や変化を電気的な情報として出力します。
自動ドアや照明制御、産業機器の位置検出など私たちの身の回りで幅広く利用されています。

光センサーの種類
光センサーにはいくつかの種類があり、それぞれ特性や用途が異なります。
代表的なものを以下でご紹介します。
フォトダイオード
フォトダイオードは光が当たることで電流が流れる素子です。
構造によってpn接合型、pin接合型、アバランシェフォトダイオード(APD)などがあります。
高速応答性と高感度が特徴であり、光通信やバーコードリーダー、照度計など幅広い用途で利用されています。
pn型フォトダイオード
最も基本的なフォトダイオードです。
pn接合部周辺の空乏層に光が照射されると、光電効果により電子と正孔が生成され電流が流れます。

図1:pn型ダイオード構造図
pin型フォトダイオード
p型半導体とn型半導体の間にi型半導体を挟んだ構造のフォトダイオードです。
i型半導体をp層とn層の間に挟むことで空乏層をより広くすることができます。
空乏層が広いとその分だけ光を受けた際に多くの電子・正孔を生成させることができるので、フォトダイオードよりも高い感度と低ノイズを得ることができます。精密な光量測定や高速通信に適しています。

図2:pin型ダイオード構造図
アバランシェフォトダイオード
アバランシェフォトダイオードとは光の検出にアバランシェ効果を使用したフォトダイオードです。
アバランシェダイオードでは他のフォトダイオードよりも高い電圧をかけることで空乏層内の電場を強くします。
この状態で空乏層に光が当たると生成された電子が加速しながら移動し、他の原子と衝突すると追加で電子と正孔を生成します。さらにこれが他の原子に衝突することでまた新たに電子、正孔を発生させていきます。
このような効果を電子雪崩やアバランシェ効果と呼び、この現象を利用したフォトダイオードです。
非常に高感度のため微弱な光も検出することができますが、他のフォトダイオードと比べ高価になります。
また、光子1個を検出するシングルフォトンアバランシェダイオード(SPAD)と呼ばれるものもあります。
こちらはマルチゾーンToFセンサーやLiDARなどに使用されます。

図3:アバランシェダイオード構造図
フォトトランジスタ
フォトトランジスタは、トランジスタのベース部に光が当たることで動作するトランジスタです。
光が当たることでベース電流が発生し、コレクタ-エミッタ間に大きな電流が流れる仕組みになっています。
フォトダイオードとは異なり、電流を増幅することができるためより大きな出力信号が必要な場合に適しています。一方で応答速度や直線性ではフォトダイオードに劣ります。

図4:フォトトランジスタ等価回路
フォトIC
フォトICはフォトダイオードと信号増幅・処理回路、出力回路などを一体化した高機能な受光デバイスです。
受光素子の後段に信号処理回路を持つため、設計の簡素化や高い信頼性を実現しています。
例えば、フォトダイオードの場合は光を受光した際に受光素子部で微弱な電流が発生すると、これを処理する外部回路が必要になります。しかしフォトICでは微弱な電流を内蔵アンプで増幅し、必要に応じてアナログ電圧としての出力や、ある閾値を超えたらデジタル信号を出力するといった信号処理が1つのパッケージで可能です。
製品によっては温度補正回路やシリアル通信機能を持ったものをあり、アプリケーションの自由度は大きく広がっています。
フォトICをフォトダイオード、フォトトランジスタと比較すると下表のような特徴があります。
使用するアプリケーションの要求に応じて適切なセンサーを選定することが重要です。
フォトダイオード
価格、応答速度重視の場合に選択されます。直線性や精度が求められる用途に適していますが、出力が微小なため外部アンプが必須です。
フォトトランジスタ
シンプルなON/OFF検出といった簡単な回路で使えます。感度が高い反面、応答速度はフォトダイオードより遅くなります。
フォトIC
設計の簡略化や、高い安定性を求める場合に適しています。
表1:フォトダイオード・フォトトランジスタ・フォトIC比較表
項目 | フォトダイオード | フォトトランジスタ | フォトIC |
---|---|---|---|
感度 | 中~高 | 高い | 非常に高い |
応答速度 | 非常に速い | やや遅い | 構成に依存 |
出力形式 | 微小電流 | 増幅された電流 | 電圧/デジタル信号など多様 |
価格 | 安価~中程度 | 安価 | 中程度~高価 *機能により変動 |
光センサーを使用したアプリケーション例
光センサーは、私たちの生活や産業のさまざまな場面で活躍しています。以下に代表的なアプリケーション例を紹介します。
スマートフォンやタブレットの自動輝度調整
周囲の明るさを検知し、ディスプレーのバックライトを自動で調整します。
これにより、屋外でも見やすく暗い場所では目に優しい表示が可能となり省電力にも貢献します。
応答速度が速く、直線性の高いフォトダイオードが良く使用されます。

自動車のアンビエントライトセンサー
車外の明るさを検知し、ヘッドライトやメーター照明の自動点灯、調整に利用されます。
トンネル進入時や夜間走行時など、ドライバーの視認性を自動で最適化します。
アナログ出力やデジタル出力を持つフォトICが使われることが多く、温度補償やノイズ耐性も考慮されています。

ToFセンサーによる距離測定・3Dセンシング
スマートフォンの顔認証やロボットの障害物検知、産業用自動化装置などでToF方式の光センサーが利用されています。
対象物に向け光を照射し、その反射光が戻るまでの時間から距離を高精度に測定できます。
対象物に対し複数点の距離測定を実施することで3Dセンシングも実現可能です。
速応答と高感度が必要なため、フォトダイオードが主に使われます。特にアバランシェフォトダイオードの一種であるSPADが用いられることもあります。

リモコン受信部
テレビやエアコンなどの家電製品では、赤外線リモコンの赤外信号を受信するために光センサーが使われています。低コストで実現できるためフォトトランジスタがよく使用されます。

自動ドアやエレベーターの安全センサー
人や物体の存在を検知し、自動ドアの開閉やエレベーターの安全制御に活用されています。
これにより、事故防止や利便性向上が図られています。コストと感度のバランスが良いフォトトランジスタが多く使われます。

まとめ
本コラムでは光を受ける側である光センサーについて解説させて頂きました。いかがでしたでしょうか。
用途に応じて「応答速度」「感度」「出力形式」「ノイズ耐性」などの要件が異なるため、センサー選定が重要になります。
本コラムを通じて、光センサー選びの基本的なポイントが整理でき、今後の設計に役立つ指標を持っていただけたなら幸いです。
光センサーの部品選定でお悩みの際はぜひご連絡ください。
光センサー以外にも発光側であるLED、赤外LEDやレーザーについても解説した記事がありますので、そちらもご一読ください。
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