放熱設計
LEDの性能や信頼性は温度に大きく影響されるため、効果的な放熱設計が欠かせません。
ここでは、LEDの放熱設計について分かりやすく解説していきます。
放熱性の重要性について
電球に比べて発光効率が高いLEDですが、投入された電力のうち光として変換されるエネルギーはおよそ30~60%程度にとどまり、残りの40~70%は熱となります。

この熱が原因で、LEDは不点灯や光学特性の変化、さらには寿命の低下といった問題を引き起こします。
たとえば、LEDのジャンクション温度(Tj)が高くなると、光出力が低下し、発光効率が悪化します。
また、長期間の高温環境では、LED内部の材料が劣化し、寿命が短くなる可能性があります。このように、熱がLEDの性能や信頼性に与える影響は非常に大きいため、発熱を抑えるための放熱設計が欠かせません。
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不灯
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特性の変化
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寿命の劣化
基板による放熱方法
LEDの放熱経路について
LEDチップから発生した熱は、リードフレームを通じて基板へと伝わります。そのため、どの端子に熱が集中するのかを正確に把握することが重要です。また、一部のLED製品には、アノードやカソードの端子に加えて、放熱専用の端子が備わっている場合があります。
特に高出力LEDでは、熱の流れが複雑になる傾向があるため、放熱経路を正しく理解することが設計の基本となります。

基板の水平・垂直方向の熱伝導
LEDの放熱を効率化するためには、基板の設計が鍵となります。ここでは、水平方向と垂直方向の熱伝導について解説します。
水平方向の熱伝導
放熱性を改善する最も基本的な方法は、基板上の銅(Cu)エリアを広げることです。銅は熱伝導率が高いため、広い面積を確保することで熱を効率的に拡散させることができます。特に、LEDの周囲に十分なCuパターンを配置することで、熱集中を防ぎ、基板全体で放熱を分散させることが可能です。
Cuエリアは、広げすぎても効果が小さくなるため、事前に実測や熱シミュレーションなどで当たりを付けることも良い方法です。

垂直方向の熱伝導
垂直方向に熱を伝える方法としては、サーマルビア(熱伝導ビア)が有効です。サーマルビアは、基板の表面から裏面へ熱を伝える役割を果たします。これにより、基板裏面の放熱面積を活用できるため、放熱効率が向上します。
サーマルビアの数を増やしすぎても、効果は小さくなるため、実測や熱シミュレーションなどで当たりを付けることも良い方法です。

基板の材料の選択
LEDの放熱性を向上させる方法の一つとして、基板の材料選択が挙げられます。
基板の材料には、一般的な紙基材やガラスエポキシ基材(FR4)のほか、より高い放熱性を持つ金属基板があります。ここでは、金属基板の特性や選択時の注意点について解説します。
金属基板は、以下のような構成を持っています(下図参照)。
表層: 銅箔(回路形成用)
中間層: 絶縁層(熱伝導性を持つ)
基材層: アルミや銅などの金属層

基材層に使用される金属の種類によって、基板全体の熱伝導率が異なります。
一般的な熱伝導率の順序は以下の通りです
FR4 < アルミ基板 < 銅基板
FR4(ガラスエポキシ基板):標準的な基板材料で、コストが低い一方、熱伝導率は低い。低発熱のLEDに適しています。
銅基板:熱伝導率が非常に高く、高出力LEDや高温環境下での使用に適しています。ただし、コストが高く重量もあるため、用途が限定されます。
金属基板を使用する際は、LEDチップやリードフレームの熱膨張係数と、基板の熱膨張係数が近いものを選択することが重要です。これにより、温度変化によるストレスを軽減し、LEDの信頼性を向上させることができます。
Tjの測定方法について
最後に放熱設計の妥当性を確認するために、Tjを推定します。
LEDのTjは、下記計算式から推定することができます。
Tj = RthJS real x Pheat + Ts
= RthJS real x (Pel - Popt) + Ts
= RthJS real x (IF x VF - Popt) + Ts
Tj:ジャンクション温度
RthJS real : 熱抵抗 (熱抵抗についてはこちらを参照してください)
Pheat : 発熱量
Pel : 投入電力(IF x VF)
Popt : 放射束(光エネルギー)
Ts : ソルダー温度
放射束については、光学測定装置を使用して測定するかデータシートの値を参考にします。
ソルダー温度は、チップが載っている端子の温度を指します。
端子がLEDの裏面にしかないLEDは、ソルダーレジストを剥がし、端子に近い配線から温度を測定することでTsが得られます。

まとめ
LEDの放熱設計は、性能や信頼性を最大限に引き出すために欠かせない要素です。
本セクションでは、以下の4つのポイントについて解説しました
放熱性の重要性
LEDの発熱が性能や寿命に与える影響を理解し、適切な放熱設計を行うことが重要です。
基板材料の選択
FR4、アルミ基板、銅基板など、用途に応じた最適な基板材料の選択が、放熱性能の向上に直結します。
Tj(ジャンクション温度)の測定方法
Tjを正確に測定・計算することで、設計の妥当性を確認し、LEDの信頼性を確保します。
これらを適切に実施することで、LEDの性能を最大限に活かし、長寿命化を実現することができます。
当社では、放熱設計に関する熱シミュレーションのサポートを行っております。
シミュレーションを活用することで、設計の初期段階から効率的な放熱対策を検討することが可能です。
ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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