LEDの放熱設計でお悩みのエンジニアのみなさま、「Cuエリア(銅箔パターン)やサーマルビアの効果がどの程度かよく分からない」そんな悩みはありませんか?
本コラムでは、今回はams-OSRAM社のLEDであるOSCONIQ
P3030を例にLEDの放熱設計の基本から、Cuエリアの広さやサーマルビアによるジャンクション温度(Tj)の変化まで、わかりやすく解説します。
このコラムは、次のような方におすすめです。
- LEDの熱対策を基礎から学びたい方
- Cuエリアやサーマルビア設計の効果を知りたい方
- 実務で使える設計のヒントを探している方
LEDの性能を最大限に引き出し、長寿命化を実現するために、ぜひ最後までご覧ください。
評価対象と主要特性
今回、評価で使用したLEDは、ams-OSMRAM社のLEDであるOSCONIQ P3030(GW QSSPA1.EM)です。
OSCONIQ P3030は、コストパフォーマンスに優れ、屋内照明や街路灯などの用途に採用されています。
表1に主要特性をまとめます。
表1 . GW QSSPA1.EMの特性
| 最大定格 | シンボル | min | typ | max | 単位 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 動作温度 | Top | -40 | ~ | 125 | °C | |
| ジャンクション温度 | Tj | ~ | 135 | °C | ||
| 最大順電流 @Tj=85°C | IF | 100 | ~ | 1300 | mA | |
| 電気・光学 特性 | シンボル | min | typ | max | 単位 | |
| 順電圧 | VF | 2.7 | 2.85 | 3.2 | V | |
| 演色評価指数 | CRI | 80 | 83 | |||
| 熱抵抗 @η=40% | RthJS elec. | 5.4 | K/W | |||
| 光束 | Φv | 104 | 164 | lm | ||
| 色温度 | 2200 | 5000 | K | |||
| 選別条件:IF=350mA,Tj=85°C | ||||||
OSCONIQ P3030の構造と放熱設計のポイント
図1は、データシートに掲載されている寸法図になります。
構造の特徴は、以下の通りです。
- Die1:ESD保護用ダイオード
- Die2:LEDチップ
- 裏面:3パッド構成(アノードとカソード)
LEDチップは中央パッドに配置され、熱を効率よく放熱させるため中央パッドが他の2パッドに比べて大きく設計されています。
そのため、LEDの放熱性を高めるには、中央パッドのCuエリアを広げることが重要なカギとなります。
図1 . GW QSSPA1.EMの寸法図面
ソルダーパッド設計の基本
LEDの放熱設計で最初に確認するべきポイントは、LEDチップがどの端子に実装されているかです。
今回のOSCONIQ P3030では、中央パッドにLEDチップが配置されています。
図2にデータシートに記載されているソルダーパッドを示します。
実線部分:フットプリント(LEDが実装される位置)
点線部分:Cuエリア(放熱性を高めるための銅箔領域)
フットプリントは実装位置のため寸法が記載されていますが、Cuエリアの寸法は記載されていません。
これは、投入電力や熱設計条件に応じて任意に調整する必要があるためです。
重要なポイント:
中央のCuエリアを大きくすることでLEDの放熱性を向上できます。
特に中央パッドはLEDチップ直下にあり、熱拡散の要となるため、基板設計時にCuエリアの確保は必須です。
Tjの温度評価
LEDの放熱設計では、中央パッドのCuエリアをどの程度確保すべきかが悩ましいポイントです。
そこで今回は、OSCONIQ P3030を用いて、Cuエリアのサイズとサーマルビアの有無がジャンクション温度(Tj)に与える影響を評価しました。
評価基板の仕様
評価に使用した基板の仕様は以下の通りです。(図3参照)
- サイズ:70 x 70mm x 1.6mm
- 基材:FR-4
- 銅箔厚:35μm
- LEDの位置:基板中央
- 片面基板
Cuエリアは4種類を準備しました。
4 × 4 mm
8 × 8 mm
16 × 16 mm
32 × 32 mm
※Cuエリアは、片側の面積となります。
さらに、サーマルビアの効果を確認するため3種類を準備しました(図4参照)。
Cuエリアは、16 x 16mmとしています。
1 line
2 line
3 line
※サーマルビア径:0.35 mm
※サーマルビアの検証では、裏面に表面と同じCuエリアを広げています。
-
図3:評価基板の仕様
-
図4:評価基板の仕様
測定条件
測定条件は、下記となります。
- IF:700mA(2W)
- Ta:23℃
- 通電時間:5分
Tjの測定方法
測定方法は、下記の手順で行います。
- 1.Tsポイントに図5のように熱電対を取り付け
- 2.積分球にLED基板を設置
- 3.LEDを点灯
- 4.5分後に光学測定 / Ts温度測定
5分後に放射束を測定し、下記式よりTjを推定します。
Tj = Ts + RthJS_real × Pheat
= Ts + RthJS_real × (IF × VF − Φe) ・・・①
Ts : ソルダーポイント
RthJS_real : 熱抵抗
Pheat : 発熱量
IF : 順電流
VF : 順電圧
Φe:放射束
GW QSSPA1.EMのデータシートには、RthJS elec.が記載されていますが今回はRthJS_realを使用します。
両者の違いについては、過去の技術コラムをご参照ください。
GW QSSPA1.EMのRthJS_realは、下記より算出できます。
RthJS_real =RthJS_elec. / (1−ηe)
=5.4/(1−0.4)
=9K/W・・・②
ηe : 発光効率
測定結果
図6はCuエリアのサイズによるTjの推移の結果を示します。
- 4 x 4mm : Tjが135℃を超え、放熱不足で不適合
- 8 x 8mm -> 16 x 16mm:Cuエリア拡大によりTjが大幅に低下
- 16 x 16mm -> 32 x 32mm:効果はあるが改善幅は小さい
結論:
Cuエリアは大きくするほど効果はありますが、32 x 32mm以上では効果が飽和します。
過剰なCuエリアの拡大はコスト増につながるため、最適なサイズは16 ~ 32mm程度と考えられます。
図6:CuエリアのサイズによるTjの推移の結果
図7は、サーマルビア本数別のTjの推移の結果を示します。
- サーマルビア無し:Tjが高い
- 1line 追加:明確な改善
- 2~3line追加:効果はわずか
結論:
Tjを下げるためにサーマルビアを入れることは効果的ですが、過剰に増やしても効果は限定的です。
コストと効果のバランスを考え、最低1line以上の配置を推奨します。
図7:サーマルビア本数別のTjの推移の結果
LEDの寿命は温度と電流に依存します。
温度が高く、電流が大きくなるほどLEDの寿命が短くなります。
例えば、IF=700 mA、Tj=85℃で10,000時間の寿命特性を持つLEDがある場合、
光源システムとして、10,000時間を達成させるためにはLEDのTjを85℃以下に抑えることが必須となります。
今回の評価結果では、32 × 32 mm程度のCuエリアが必要であることが分かります。
さらに周囲温度が高くなるような厳しい環境では、アルミや銅などの金属基板を使用することで、放熱性を大幅に向上できます。
これにより、LEDの寿命を確保をし、光源システム全体の信頼性を高めることが可能です。
※LEDの寿命カーブが必要な場合は、当社までご連絡ください。
まとめ
LEDの放熱性を高めるためには、以下のポイントが重要です。
-
Cuエリアの拡大
LEDチップが載っている中央パッドのCuエリアを大きくすることで、熱拡散が促進されます。
ただし、過剰に大きくしても効果は飽和するため、最適サイズは16~32 mm程度です。 -
サーマルビアの追加
サーマルビアを設けることで、基板裏面への熱移動が可能になります。
少なくとも1ライン以上の配置を推奨しますが、過剰に増やしても効果は限定的です。
今回の評価では、Cuエリアのサイズとサーマルビアの有無によるTjの変化を確認しました。
結果として、Cuエリアの拡大は高い放熱効果を得られますが、効果は飽和すること、サーマルビアも入れた方が放熱効果を得られますが、過剰配置は不要であることが分かりました。
当社では、光学測定やTjの測定 及び 熱シミュレーションなど対応可能です。
その他、LEDでお困りでしたら、お気軽にお問合せ下さい。
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