UV LEDの導入を検討中のエンジニアの皆様、「水銀ランプとの違いが分からない」「安全性や最新技術が気になる」といった悩みはありませんか?
本記事では、「紫外線(UV)」の基礎から、「UV LED」と「水銀ランプ」の違い、安全な使い方、最新の技術動向までをわかりやすく解説します。
本コラムは、次のような方におすすめです。
- UV LEDの基礎を学びたい方
- 水銀ランプとの違いを知りたい方
- UV技術の安全な使い方や最新動向に興味がある方
UV LEDの基礎から応用、安全対策までを理解すれば、用途に最適な紫外線技術を選べます。
1. 紫外線(UV)とは?
1.1 UV-A / UV-B / UV-C
「紫外線(UV)」とは可視光線よりも波長が短く、エネルギーの高い電磁波の一種です。
また「UltraViolet」の頭文字をとって、UVとも呼ばれます。
紫外線の波長は一般的に100~400nmで、主に次の3種類に分類されます。
- UV-A(315~400nm):紫外線の中で最も波長が長く、エネルギーが低め。主に物質の表面に作用します
- UV-B(280~315nm):UV-Aよりもエネルギーが高く、皮膚の日焼けや植物の成長に影響を与えます
- UV-C(100~280nm):紫外線の中で最も波長が短く、最もエネルギーが高いため、強い殺菌作用を持ちます
「太陽光スペクトル」とは、太陽から放射される光の波長分布を示します。
地球のオゾン層は「UV-C」と「UV-B」の大部分を吸収します。そのため、地表に届く紫外線の主な成分は、「UV-A」となります。(図1参照)

図1:太陽光スペクトル 及び 地表に到達するUV成分
1.2 紫外線が物質に与える影響
紫外線は、高エネルギーであるため、物質に化学変化や劣化など多様な影響を与えます。
1.化学反応の促進
紫外線は分子を活性化し、化学反応を引き起こします。この特性は樹脂硬化や印刷技術に活用されています。
2.殺菌作用
特にUV-Cは、微生物のDNAを破壊し、医療や空調機器などで強力な殺菌効果を発揮します。
3.変色や劣化
紫外線はプラスチックや染料を変質・劣化させる主要な要因の一つです。
2. 紫外線を活用した主な用途
紫外線は波長ごとに、殺菌、硬化、医療など多様な用途に活用されています。
UV-Aの用途
3Dプリンター用樹脂硬化、基板レジスターの露光、紙幣の偽造防止、紫外線硬化型インキなどに利用されています。
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図2:樹脂硬化
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図3:紙幣の偽造防止技術
UV-Bの用途
植物の病害抵抗性や環境耐性の向上、皮膚疾患の治療(光線療法)などに活用されています。
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図4:植物の病害抵抗性の向上
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図5:皮膚疾患の治療
UV-Cの用途
飲料水や空気の殺菌、医療機器や設備表面の消毒、空調機器内部の除菌など、衛生管理に広く利用されています。
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図6:飲料水の殺菌
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図7:空気清浄機の除菌
紫外線は高エネルギーを活かし、医療・食品・製造分野で殺菌や硬化用途に広く使われています。
3. UV LEDの構造と特長
3.1 UV LEDの構造
紫外線光源は、主に半導体素子(UV LED)とアーク放電方式(水銀ランプなど)の2種類があります。
ここでは、UV LEDの構造 と 使用材料について解説します。
UV LEDのチップは、発光波長ごとに異なる材料が使用されます。
- UV-A:GaN系やAlGaN系材料
- UV-B / UV-C:AlGaN系材料
UV LEDの構造は一般的なLEDと似ています。
ただし、紫外線は樹脂を劣化させるため、パッケージにはガラスやセラミックなどUV耐性材料が使われます。
図8:UV LED構造
3.2 UV LEDの特長
UV LEDは、次のような特徴があります。
- 瞬時点灯・消灯が可能:ウォームアップ時間が不要
- 小型化が容易:装置の省スペース化や設計の自由度向上
- 波長が選択可能:用途に最適な波長を選択
- 環境負荷低減:水銀不使用で環境に優しい
3.3 UV LEDの波長と放射束の重要性
用途ごとに最適な波長を選ぶことで、紫外線の効果を最大限に発揮できます。
例えば、樹脂硬化には365nm付近、殺菌には265nm付近の波長が効果的です。
放射束が高くても、波長が適切でなければ反応効率が下がります。
用途に合った波長と十分な放射束を両立したUV LEDの選定が重要です。

図9:最適な波長の選択
4. UV LEDと水銀ランプの比較
水銀ランプは紫外線光源として長年利用されてきました。
近年はUV LEDが環境対応の面で注目され、急速に普及しつつあります。
UV-C LEDをベースに両者の主な違いを表1にまとめました。
表1:UV LED(UV-C)と水銀ランプとの比較
UV LED | 水銀ランプ | |
---|---|---|
発光原理 | 半導体発光 | 水銀蒸気放電 |
発光効率 | 3~5%程度 (年々向上) | 20~40%程度 |
価格 | 高価 (低下傾向) | 安価 |
応答性 | 瞬時点灯・消灯 | 遅い (ウォームアップ必要) |
サイズ | 小型化可能 | 大型 |
環境負荷 | 水銀不使用 | 水銀使用 |
波長選択性 | 特定単一波長 | ブロードスペクトル |
水銀ランプは発光効率やコスト面で現在も優れています。
一方、UV LEDは応答性や小型化、環境負荷低減、波長選択性など多くの利点があります。
特に2021年から一般照明用の水銀ランプの製造・輸出入が禁止されています。
これにより、UV LEDへの移行が加速しています。
なお、紫外線用途の水銀ランプは現在規制対象外です。
しかし、将来的に規制が強化される可能性があります。
5. 紫外線の安全性と正しい使い方
紫外線はエネルギーが高く、皮膚や目など人体に悪影響を与えることがあります。
特にUV-Cは強い殺菌作用がありますが、短時間でも皮膚炎や角膜炎を引き起こすことがあります。
UVを安全に使うためには、次の対策が重要です。
1.UV保護メガネの着用
紫外線から目を守るため、必ずUVカット機能付きの保護メガネを着用してください。
2.長袖や手袋の着用
皮膚への直接照射を防ぐため、作業時は長袖や手袋を着用しましょう。
3.皮膚への照射防止
紫外線が皮膚に当たらないよう、遮光設備や作業エリアの設計を工夫しましょう。
4.遮光カバーやインターロック機構の採用
紫外線漏れを防ぐため、装置には遮光カバーや安全インターロック機構を導入しましょう。

図10:紫外線からの安全対策
6. 最新技術動向と今後の展望
UV-A、UV-B、UV-Cの各LEDは、発光効率の向上とコスト削減が長年の課題でしたが、近年の技術革新により大きく改善されています。
特にUV-C LEDは、医療機器や空調設備などの殺菌・消毒用途で需要が急増しており、市場規模も拡大しています。
今後、発光効率の向上と製造コストの削減が進むことで、水銀ランプからUV LEDへの置換えがさらに加速すると予想されます。
また紫外線の波長制御技術が進化し、硬化や殺菌プロセスの精度が向上しています。
これにより、医療・食品・電子部品製造など、さまざまな分野での応用が期待されています。
7. まとめ
紫外線(UV)は、UV-A・UV-B・UV-Cの3種類に分類されます。
また、可視光よりも高いエネルギーを持つため、硬化や殺菌など多様な分野で活用されています。
これまで主流だった水銀ランプに代わり、環境負荷の低減や安全性、小型化の観点からUV LEDへの移行が進んでいます。
太陽光スペクトルや紫外線の基礎知識を理解し、UV LEDの特性と安全対策を把握することで、紫外線技術を効果的かつ安全に活用できます。
弊社では、用途に応じたUV LED製品をご提案しております。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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