「光学測定」は、LEDや照明製品の性能評価に不可欠な技術です。明るさや色など、光の物理的特性を正確に測定することで、製品設計・品質管理・認証試験など幅広い分野で信頼性の高いデータが得られます。
一方で、測定項目ごとに専用機材が必要となるため、導入コストや運用の難しさが課題となります。この記事では、光学測定の基礎から主な測定項目・装置、不確かさの考え方、さらに当社の測定サービスまで、実務に役立つポイントをわかりやすく解説します。
光学測定の概要と必要性
光学測定とは
光学測定とは、光の物理的特性(強度、分布、色、効率など)を定量的に評価するための測定技術です。特に照明器具やLEDの性能を正確に把握するために重要で、製品の仕様にあわせた光学特性の測定を実施することが重要です。測定項目にあわせて専用の測定機具を準備する必要があります。また取得した測定値については「不確かさ」と呼ばれるばらつきに関する考慮も必要となります。
なぜ光学測定が必要なのか
LEDは、製造時のばらつきにより色度や明るさなどの特性が個体ごとに異なります。LED単体の使用では影響が小さいものの、多数のLEDを実装した照明やディスプレー製品では、個体差が外観や色味のズレといった問題につながることがあります。
こうした問題を回避するには、専用機器による光学測定を行い、できるだけ特性の近いLEDを選別することが重要です。
主な測定項目
測定対象となるLEDや照明製品によって、必要な光学測定項目は異なります。主な測定項目は以下の表となります。
各項目については以下のコラムでも解説していますので是非ご確認ください。
主な測定項目一覧
| 主な測定項目 | 単位 | 概要 | 主な測定用途 |
|---|---|---|---|
| 光束 | ルーメン [lm] | 光源から放射される光の総量を示す指標 | 照明器具の明るさ評価、ランプ性能比較 |
| 光度 | カンデラ [cd] | 光源の特定方向における光の強さを示す指標 | 配光設計、投光器やヘッドライトの性能評価 |
| 配光特性 | グラフ表示 | 光の方向分布を示す特性 | 照明器具の光の広がり方、配光制御設計 |
| 色度 | Cx、Cy | 光の色を数値化した座標値(CIE色度図上の位置) | 色品質評価、ディスプレーや照明の色管理 |
| 色温度 | ケルビン [K] | 光源の色を黒体放射の温度に換算した値 | 照明の雰囲気設計、写真・映像のホワイトバランス調整 |
| 演色性 | 平均演色評価数 [Ra] | 光源が物体の色を自然に見せる能力を示す指標 | 店舗照明、医療照明、色再現性が重要な用途 |
| 分光分布 | W/nm または相対値 | 光源の波長ごとのエネルギー分布を示す特性 | 色評価、光源のスペクトル特性解析、植物育成照明等 |
代表的な測定装置
光学測定では測定項目ごとに専用の測定装置が必要です。代表的な測定装置とその用途を以下でご紹介します。
代表的な光学測定装置一覧
| 測定手法 | 主な測定項目 | 特徴・メリット | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 積分球 | 全光束、色度、分光分布、CRI | 光を均一に拡散し、全光束を測定 | LEDランプ、照明器具の光束評価 |
| 光度測定機 | 光度、色度、分光分布、CRI | 光源正面のみの光を受光し光度測定 | インジケータ、表示機の光度評価 |
| 配光測定機 | 配光特性 | 指向性評価に最適、配光曲線を取得可能 | LEDや光モジュールの配光特性評価 |
測定結果における不確かさについて
光学測定で得られる測定値には、必ず「不確かさ」(ばらつき)が含まれます。高性能な測定器を使っても、この不確かさは避けられません。不確かさを理解し、適切に評価することが測定の信頼性確保には不可欠です。
主な不確かさ要因
不確かさの主な要因は以下の通りです。
これらの要因を考慮した測定値の扱いが必要です。
- 測定機器の校正誤差
- 測定環境(温度、湿度、外乱光、振動など)
- 測定手順や測定者のばらつき
- 被測定物の個体差や安定性
- データ処理・解析手法の違い
不確かさの概要
国際的なガイドライン
不確かさを評価するには、測定値の信頼性を定量的に確認する必要があります。国際的にはGUM(Guide to the Expression of Uncertainty in
Measurement)という指標が広く用いられています。
GUMは、測定における不確かさの評価と表現方法を国際的に統一したガイドライン「ISO/IEC Guide
98-3」です。このガイドラインに従って校正された機器や手法を使うことで計測や試験の信頼性を確保できます。
当社測定設備のご紹介
当社では各種光学測定機を保有しており、代表的な測定項目に対応可能です。
LED点灯治具も多く準備しているため、基板実装前にLEDの個体データを測定出来ます。
また、内部に測定物を配置できる大型積分球を使用することで、基板実装済みや完成品状態のLEDでも光学測定が行えます。それぞれの測定機について以下に紹介します。
積分球:ISP500
- Instrument system社製の積分球
- 直径500mmの大型サイズで、基板やモジュール状態の試料も内部に配置して光学測定が可能
積分球:ISP500
光度測定機
- 光度測定用の治具
- 専用ソケットにLEDを配置し、主にLED単体の測定に対応
光度測定機
分光器:CAS140-CTS
- Instrument system社製の分光器
- 可視光から赤外光まで幅広い波長に対応
- 積分球・光度測定機の両方で分光処理を行い、PC上の専用GUIソフトで各測定値を確認可能
分光器:CAS140-CTS
X線解析
- 光学測定と共に当社で保有しているX線解析装置を使用し、LED内部の故障解析も対応
- 光量が想定より少ない、電気的特性に異常がある、等の測定結果でも原因追及を同時に実施可能
X線解析例
当社測定サービスについて
ご紹介した測定装置を使用し光学測定サービスを実施しています。
ネクスティ
エレクトロ二クスが取り扱う商材以外のデバイスでもご利用可能です。
光学測定をはじめ、さまざまなサービスを紹介する品質・解析サポートページもぜひご覧ください。
まとめ
光学測定は、LEDをはじめとする光源や照明製品の品質・性能を正確に評価するために不可欠な技術です。
製品ごとの個体差や測定環境によるばらつきを適切に管理し、信頼性の高いデータを取得することは、設計・開発・品質保証の各段階で重要な役割を果たします。
本コラムで紹介したように、測定項目や装置の選定、不確かさの評価など、光学測定には多くの専門的な知見が求められます。当社では多様な測定設備とノウハウを活かし、基板実装前後を問わず幅広いニーズに対応可能です。LED製品の開発や評価で光学測定が必要な場合は、ぜひお気軽にお問合せください。
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