IT機器で発展してきたイーサーネットの技術は、新領域である自動車と産業機器で採用されるようになりつつあります。
しかし、イーサネットは通品品質を保証しないベストエフォートの思想のもとに発展してきた通信方法であるため、 各々のアプリケーションで要求される通信品質を実現することが難しいという課題がありました。
この課題を解決可能なTSN技術の導入に注目が集まっています。 本コラムでは、TSNの概要について、説明します。
TSNとは
TSNとは、Time Sensitive Networkの略称で、IEEE(米国電気電子学会)が定義するイーサネット(=OSI参照モデルのデータリンク層)の拡張規格群です。
TSNの主な使命は、Deterministic性の実現です。
Deterministic性とは
データ転送が時間的に予測可能であり、遅延やジッター(データ到着時間のばらつき)を最小限に抑える性能です。つまり、イーサネットフレームが、宛先に、決められた時間に確実に到着することを保証する性能です。
Deterministic性の必要性
映像/音声などのストリーミングデータ、センサーデータ、および、制御系データなど緊急性が高いデータを運ぶイーサーネットフレームが、確実に決められた時間に宛先へ到着できない場合、宛先の機器/システムの制御が遅れ、期待する性能が出せないことがあります。
例えば、自動車のADAS(先進運転支援システム)システム、自動運転システムにおいて、時間通りにセンサーからのデータが処理部に届かない場合、自動車の制御遅れにつながり、事故を引き起こしてしまう可能性があります。
また、工場における産業機器システムでも、同じく制御遅れにより、機器が異常動作をする事故を引き起こしてしまう可能性があります。
TSNのユースケース
前述のとおり、例えば、自動車の自動運転システムにおいて、 Deterministic性を実現するために、TSN技術を導入する必要があります。
TSNに含まれる規格
TSNは、IEEE802.1標準化組織のTSNタスクグループにて定義されている複数の個別規格にて構成されています。 TSN個別規格は、前述のとおり、図2に記載のOSI参照モデルのデータリンク層に基づく規格となります。 代表的な個別規格を、表1に示します。TSN規格は、現在も進化をし続けており、草案段階のものも含め、表1以外の個別規格が存在しています。
Deterministic性を実現するために、TSNが提供する主な機能
時刻同期
TSNは、ネットワークのデバイス間で、時刻の正確な同期を可能にするIEEE802.1AS_Rev規格を採用しています。
この時刻同期により、各デバイスにおける正確な時刻でのアクション実行が可能になります。
トラフィックスケジューリング
TSNは、ネットワーク内でトラフィックをスケジュールするために、IEEE802.1Qbv規格を採用しています。
各時間スロットにて、割り当てられているトラフィッククラスに属するイーサネットフレームが送信されます。
サービス品質(QoS)
TSNは、イーサーネットフレームの送信を中断させて、優先度が高いイーサーネットフレームの送信を開始できるように、IEEE802.1Qbu規格を採用しています。
遅延なく、即座に優先度の高いイーサーネットフレームの送信が可能になります。
ネットワークの保護
TSNは、ネットワークに対する悪意の攻撃、ネットワークデバイスの故障/異常状態からの分離できるように、IEEE802.1Qciを採用しています。
悪意の攻撃、ネットワーク内のデバイスの故障/異常によって、大量のイーサーネットフレームを受信しても、その影響が最小限に抑えることが可能となります。
シームレスな冗長性
TSNは、ネットワークの耐障害性を向上させるために、冗長性メカニズムを定めた802.1CB規格を採用しています。
イーサーネットフレームを複製し、宛先への複数の経路に送信することによって、耐障害性を向上させます。
まとめ
本コラムでは、TSN(Time Sensitive Network)の概要について、説明しました。
次回掲載コラムから、表1に記載しましたTSNの個別規格について、順次解説します。
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