車載Ethernetを選定する上で重要な以下項目について、本記事では解説していきます。
- 基本スペックの確認ポイント
- 通信品質・リアルタイム性の確保
- セキュリティー・冗長性
どのような機能を選べばよいのか、どの観点から選べばよいのか、部品選定に迷っている方はぜひご参照ください。
はじめに:なぜスイッチ選定が重要なのか
近年、車載ネットワークの進化は急速に進化しています。従来のCANやLINといった通信方式から、より高速・高帯域なEthernetベースの通信へとシフトが進んでいます。特にADAS(先進運転支援システム)や自動運転、インフォテインメントの高度化により、車両内で扱うデータ量は数倍以上に増加しています。
このような背景の中で、Ethernetスイッチは単なる「通信の中継器」ではなく、車載システム全体の信頼性・リアルタイム性・セキュリティーを担う中核的な役割を果たします。
スイッチの選定を誤ると、以下のような問題が発生する可能性があります:
- 通信遅延やパケットロスによる制御系の不安定化
- セキュリティー脆弱性による外部からの攻撃リスク
本記事では、車載Ethernetスイッチ選定時に押さえておきたい技術的・実務的なポイントを、実際の開発現場で得られた知見を交えながら解説していきます。
基本スペックの確認ポイント
車載Ethernetスイッチ選定時は、まず基本スペックを確認しましょう。これは、スイッチが車両のアーキテクチャーや用途に適合するかを判断するための重要な項目です。
ポート数と構成
接続するECUやセンサー、カメラの数に応じて必要なポート数を選定します。
一般的なスイッチは4〜16ポートですが、システム毎に最適なポート数は異なります。
通信規格毎に必要なポート数とその内訳を明確にしましょう。

対応通信規格
Ethernetスイッチが対応する通信規格は、車両ごとの通信要件を満たすために非常に重要です。適切な規格を選定することで、システム全体の安定性や性能向上につながります。
規格は主に以下の通りです。
- 100BASE-T1:中速 センサーデータや制御系向け。
- 1000BASE-T1:中高速 カメラ映像やインフォテインメント向け。
- 10BASE-T1S:低速 センサーデータの伝送向け。
Ethernetスイッチ選定時には、PHY(物理層デバイス)との接続方式(SGMII、RGMII、RMIIなど)も必ず確認しましょう。これにより、設計の互換性や拡張性が確保できます。
下記弊社HPから詳細ご確認いただけます。

通信品質・リアルタイム性の確保
車載Ethernetスイッチの選定において、通信品質とリアルタイム性の確保は極めて重要です。特にADASや自動運転、車両制御系では、通信遅延や不安定なネットワークが安全性や制御精度に直結するため遅延の少ない安定した通信が求められます。
TSN(Time-Sensitive Networking)対応
TSNは、Ethernet通信にリアルタイム性を付与するための技術群です。TSN対応スイッチを選定することで車載ネットワークにおいて高い信頼性とリアルタイム性を実現できます。主なTSN機能は以下の通りです。
802.1Qbv(スケジューリング)
→ 通信スケジュールを制御し、優先度の高い通信を確実に伝送する。
802.1AS(時間同期)
→ ネットワーク全体での時刻同期を実現し複数ECU間の制御信号の整合性や協調動作を可能にする。
802.1Qbu(フレームプリエンプション)
→ 長いフレームの途中でも、緊急性の高い制御信号などを割り込ませて送信する。
下記弊社HPから詳細ご確認いただけます。

セキュリティー・冗長性
車載ネットワークは、安全性と信頼性が最も重視される通信環境です。Ethernetスイッチの選定においても、セキュリティー機能と冗長性の確保は欠かせません。特に、外部接続やOTA(Over-the-Air)更新、V2X通信などが増える中で、不正アクセスや通信断への備えが求められています。
セキュリティー機能
MACsec(IEEE 802.1AE)
MACsecは、通信を暗号化し、改ざんや盗聴を防止する技術です。車載用途では、以下のような場面で活用されます。:
- ゲートウェイを介した外部との通信時のセキュリティー強化
- ECU間の機密データ(ログ、診断情報など)の保護
- OTA(Over The Air)更新時のデータ整合性確保
MACsec対応スイッチを選定することで、ハードウェアレベルでのセキュリティー対策が可能になります。
下記弊社HPから詳細ご確認いただけます。

ACL(Access Control List)
ACLは、スイッチを通過する通信をルールに基づいて制御する機能です。以下のような設定が可能です:
- 特定のMACアドレスやIPアドレスの通信を許可・拒否
- ポート単位での通信制限
- プロトコル単位でのフィルタリング
ACLを活用することで、不正アクセスや不要な通信を遮断しセキュリティーポリシーを柔軟に実装可能になります。
下記弊社HPから詳細ご確認いただけます。

802.1CB(Seamless Redundancy)
802.1CBは、同じデータを複数の経路で同時送信することで、通信断が発生しても自動的に代替経路で通信を継続する技術です。以下のような用途で活用されます:
- 自動運転制御系の通信の信頼性向上
- カメラ・センサーからの映像データの安定化
- ゲートウェイやバックボーン通信の冗長化
802.1CB対応スイッチを選定することで、フェイルセーフ設計が可能となり、車両の安全性や信頼性を向上させることができます。
下記弊社HPから詳細ご確認いただけます。

まとめ:車載Ethernetスイッチを正しく選ぶために
車載Ethernetスイッチの選定は、通信品質・セキュリティー・設計性・評価性などさまざまな観点から総合的に判断することが重要です。特にADASや自動運転の進展により、車両内の通信は複雑・高性能化しています。
本記事では、技術仕様だけでなく、実装・評価・診断など実際の開発現場で役立つ観点から選定時に確認すべきポイントを整理しました。
皆さんの製品開発や設計検討において、最適なEthernetスイッチ選定とプロジェクトの円滑な進行の一助となれば幸いです。

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