フローコントロールは、データ通信で送信側と受信側のバランスを保ち、データ損失やエラーを防ぐための重要な技術です。本記事では、Ethernetにおける代表的なフローコントロール手法を、図解を交えて分かりやすく解説します。
フローコントロールが必要な理由は?
フローコントロールという考えがないと、どうなるでしょう?
もしフローコントロールがなければ、送信側は受信側の状況を考慮せずにデータを送り続けます。その結果、受信バッファーが満杯の場合、データがオーバーフローし、重要な情報が失われてしまいます。

図1. フローコントロールがない場合
Ethernetにおけるフローコントロールの手法は?
Ethernetには全二重通信方式と半二重通信方式がありますが、現在主流の全二重通信方式におけるフローコントロール手法に焦点を当てて解説します。
全二重通信方式のEthernetでは、フローコントロールのために“PAUSEフレーム”と呼ばれる特殊な制御フレームを使用します。
PAUSEフレームとは
PAUSEフレームは、対向機器に送信の一時停止や再開を指示するための制御フレームです。以下に、そのフォーマットと各フィールドの役割を解説します。

図2. PAUSEフレームフォーマット
宛先MACアドレス(6バイト):01-80-C2-00-00-01(Multicast Address)
送信元MACアドレス(6バイト):自身のMACアドレス
タイプ(2バイト) :8808h
操作コード(2バイト) :0001h
中断時間(2バイト) :0~65535
※中断時間について
1単位→512ビット時間を示す。
100Mbps通信の場合、1単位=5.12マイクロ秒に相当する。1Gbps通信の場合、1単位512ナノ秒に相当する。
このフレームを受信した機器は中断時間が指定された間、送信を停止します。中断時間が“0”の場合は、即座に送信を再開します。
PAUSEフレームによるフローコントロール
PAUSEフレームを活用することで、送信の停止・継続・再開を柔軟に制御できます。以下、具体例を用いてその仕組みを 解説します。
送信停止
受信側がPAUSEフレームを送信することで、送信側は一定時間データの送信を停止します。
これにより、受信バッファーのオーバーフローを防ぎ、通信の安定性を確保します。

図3. 送信停止
送信停止継続
受信側のバッファーが閾値を超えた状態が続く場合、PAUSEフレームが繰り返し送信され、送信側はデータ送信を継続して停止します。
これにより、受信側の処理が追いつくまで通信の一時停止が維持されます。

図4. 送信停止継続
送信再開
PAUSEフレームで指定された中断時間が経過すると、送信側はデータ送信を再開します。
これにより、受信側のバッファーの状況に応じた柔軟な通信制御が可能となります。

図5. 送信再開
まとめ
今回は、Ethernetのフローコントロール技術としてPAUSEフレームの仕組みを解説しました。実際の設計やトラブルシュートの際に、ぜひご活用ください。
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